今月21日から東京・新宿末広亭でなつかしい名跡「桂小南」が21年ぶりに復活する。2代目は東京に上方噺を広めた功労者だった。先日、小南治あらため3代目桂小南(55)の襲名披露宴が都内のホテルで行われた。大相撲秋場所の初日を前にした元大関琴風の尾車親方、関脇嘉風、前頭豪風ら関取、桂歌丸、三遊亭小遊三の落語芸術協会の会長・副会長、最高顧問の桂米丸、落語協会からは柳亭市馬会長、三遊亭金馬らがお祝いに集まった。

 車いす姿で登場した81歳の歌丸は「2代目のネタを1番多くやってきたのが、3代目の新小南さん。より大きな看板になってほしい」とエールを送り、88歳の金馬は「3代の小南を知っているのは私くらい。3代目が小南の名前をますます大きくしてくれるでしょう」。初代は70年前の47年に亡くなっているが、その後あいさつに立った92歳の米丸も負けじと「私も初代を知っています」と話し、両長老の芸歴の長さに会場から大きな拍手が起こった。千秋楽後の打ち上げには駆けつけるなど親交が深い尾車親方は自身の歌「まわり道」を歌い、おかみさんもサックス演奏を披露した。

 3代目の父は紙切りの2代目林家正楽。将来は紙切りになるつもりで、2代目に入門したが、二つ目昇進の時に落語家に専念することを決めたという。新小南によると、「迷ったけれど、師匠のカバン持ちをしていた時に師匠が『ワシのほうから正楽さんにようく言うといたるから』と言ってくださった」という。2代目については「悟りを開いたお坊さんのようで、温和でそばにいて居心地の良い師匠でした」と振り返った。

 埼玉・春日部に生まれ、今も春日部に住んでいる。父正楽のことを楽屋では師匠と呼んでいたが、一緒に春日部に帰る時に「2人になった時は『父ちゃん』と呼べばいいんだ」と言われたとのエピソードを明かした。襲名披露興行には協会の垣根を越えて、落語協会に所属する実弟で紙切りの林家二楽(50)も特例で出演する。最後に新小南は「落語協会の林家二楽ともども、落語芸術協会の3代目桂小南をよろしくお願いします」とあいさつした。「小南治が継ぐと言うなら異論はないよ。協力するよ」と襲名を後押しした兄弟子たちも笑顔で見守っていた。飾らない人柄そのままに、温かい襲名披露宴だった。【林尚之】