ミュージカル「レ・ミゼラブル」が2年ぶりに東京・帝国劇場に帰ってきた。1987年の初演以来、数年おきに再演を重ねてきた人気公演とあって、緊急事態宣言下の中でもチケットはあっという間に完売したという。

ビクトル・ユゴーの大河小説を原作にした作品の魅力はストーリー、音楽はもちろん、ジャン・バルジャン、ジャベールなど主要キャストは3人、4人が交互に演じており、何十通りともなる配役の妙を楽しめるところにもある。毎回、新しく参加する人も多くいて、今回はミュージカル初挑戦の六角精児がテナルディエを演じている。コゼットの2人は新加入だし、一般のファンが参加した「レ・ミゼラブル×帝劇 のどじまん・思い出じまん大会」の優勝メンバーの1人が初出演している。子供時代にミュージカル「アニー」のアニー役で主演した2人がアンサンブルで参加している。

34年に及ぶ上演の歴史の中で、この「レ・ミゼラブル」から生まれたスターも多い。山崎育三郎はマリウス役で注目されたし、20年のNHK連続テレビ小説「エール」に出演して話題を呼んだ吉原光夫も11年に最年少でジャン・バルジャン役に抜てきされている。

演じる役を代えて「レ・ミゼラブル」に戻ってくる人もいる。今回、ファンテーヌを演じている知念里奈は過去にコゼット、エポニーヌを演じているし、山本耕史も子役でガブローシュ、大きくなってマリウスを演じている。17年、19年にコゼットを演じた生田絵梨花が今回はエポニーヌに初めて挑んでいる。実は17年出演時のオーディションではコゼットとエポニーヌの両方で受けており、いつかはエポニーヌをという思いがあったという。コゼットとエポニーヌとでは音域も声質も違うため、「地をはうような音色を出せるようにトレーニングを重ねてきました」と、初日前の会見で明かしている。実際、生田エポニーヌを見たけれど、やさぐれだけど、心に秘めた純愛に命をささげるいちずな少女を見事に演じていた。そして、知念が30歳でファンテーヌを初めて演じたように、今24歳の生田が数年後にはファンテーヌに挑むようになるかもしれない。

役を通して俳優たちの成長を見るのも「レ・ミゼラブル」を見続ける楽しみでもある。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)