あけましておめでとうございます。今年も初芝居は歌舞伎で始まります。最近は1月3日に浅草公会堂で「新春浅草歌舞伎」、翌4日に歌舞伎座「初春大歌舞伎」を見るのが慣例でしたが、コロナ禍で昨年、今年と浅草歌舞伎の公演はなく、4日の歌舞伎座が22年の初観劇となります。

今年もジブリ作品の舞台版「千と千尋の神隠し」、松本白鸚が半世紀にわたり演じ続けた「ラ・マンチャの男」のファイナル公演、延期となっていた「ミス・サイゴン」の日本初演30周年記念公演など、注目の公演がめじろ押しですが、今、気になっているのが、市川海老蔵の「13代目市川團十郎白猿」襲名披露興行のことです。

本来なら、東京五輪が開催される予定だった2020年の5月から3カ月興行として歌舞伎座で始まるはずでしたが、コロナ禍で延期となりました。昨年1月にも、このコラムで「今年こそ團十郎襲名はあるのか」と書きましたが、襲名興行については白紙という状況は変わっていません。

歌舞伎座も20年8月の興行再開以来、前後左右の席を空けて定員の50%以下が原則だったが、今年1月からは間隔をあけた2席並びの配置に変更した。ただ、それでも定員の6、7割ですから、100%収容の他劇場に比べると、慎重さが際立ちます。収束したと言えるようになるまで歌舞伎座が満席で興行をすることはないでしょう。大入りが確実の襲名興行ですから、コロナ禍が収束して歌舞伎座が満席で興行できるまで状況をじっくりと見て、襲名興行の時期を判断すると思います。

感染者はピークに比べると激減していますが、オミクロン株の出現で先行きは不透明です。そんな現状からの結論で言えば、今年も襲名興行は難しいのではないでしょうか。團十郎襲名は歌舞伎界の最大イベントですから、ファンと触れ合う「お練り」や華やかな襲名披露パーティーなどは欠かせないでしょう。もちろん、そういうイベントはなくして、粛々と行うことも考えられます。

しかし、数十年に1度のことですし、ましてやコロナ禍が収束した後の襲名興行となれば、見る側も演じる側も開放感いっぱいのまさに「祝祭」ともいうべき、門出にふさわしい興行になるはずです。新團十郎による「にらみ」を見る日を気長に待ちたいと思います。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)