三谷幸喜が脚本を書いているNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を毎回、楽しく見ている。特に、かつて三谷が率いた劇団「東京サンシャインボーイズ」のメンバーの姿には懐かしさがある。梶原善が冷酷な暗殺者の善児、相島一之が仏師の運慶、阿南健治が御家人の土肥実平、野仲イサオは鎌倉殿を支える13人の1人、二階堂行政を演じている。

東京サンシャインボーイズは、三谷が日大芸術学部に在籍中の1983年に旗揚げされた。今はない、池袋とまとハウスで上演された「6ペンスの唄」で、公演回数5ステージ、観客動員は255人だった。「孤独のグルメ」の松重豊も出演していた。観客動員が1000人を初めて超えたのは89年「天国から北へ3キロ」で、相島、阿南、梶原も出演したほか、三谷も一橋壮太朗の芸名で出演していた。このころから「チケットがとれない」人気劇団となり、新宿シアタートップスや紀伊国屋ホールで公演を行った。92年「もはやこれまで」で1万人の大台に乗り、人気絶頂だった94年に「東京サンシャインボーイズの『罠』」を最後に劇団としての活動を休止し、充電期間に入った。

この公演のパンフレットに、実は次回公演の予告が掲載されている。東京サンシャインボーイズあらため「老境サンシャインボーイズ」の「リア玉」。もちろん、三谷の脚本で、相島、阿南、梶原、野仲らがキャストに名前を連ねている。公演日程は2024年9月6日から8日までの3日間で、公演場所は新宿シアタートップス。活動休止から30年後の予告だった。

当時は、充電=解散との思いが強く、30年後の公演には懐疑的だったけれど、2009年にシアタートップスが閉館した際には急きょメンバーが集結しての復活公演「returns」を行った。その時の終演後のアナウンスでは「15年間の休憩に入ります」と放送された。

30年もの充電期間が長いと思っていたけれど、充電明けまで2年2カ月と迫ってきた。パンフレットでは主演が梶原に決まっているとし、「企画としてはかなり具体的なところまで進んでいる」「面白い作品になることだけは確実である」と書いている。シアタートップスも09年に閉館したものの、21年には本多劇場グループの劇場として復活した。梶原も善児役で注目度を上げている。本当に「リア玉」上演はあるのか。三谷の決断に注目したい。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)

梶原善(2015年1月14日撮影)
梶原善(2015年1月14日撮影)