8月は国立劇場伝統芸能伝承者養成所の出身者を中心とした公演を見てきました。

8日は歌舞伎音楽既成者研修発表会「音の会」、そして15日には歌舞伎俳優既成者研修発表会「稚魚の会・歌舞伎会合同公演」。ともに昨年までは国立小劇場での開催でしたが、昨年10月に閉場したため、浅草公会堂に公演場所を移しての公演でした。

会場が変わったことで、客の入りが気になりましたが、どちらともに熱心なファン、関係者で盛況でした。歌舞伎界は世代交代の時期を迎えていますが、その公演を支えているのが、一般家庭から養成所で研修を重ねた歌舞伎俳優たち、同じく養成所で竹本、長唄、鳴物という歌舞伎に欠かせない音楽を継承してきた演奏者たちです。いつもは脇にまわっていますが、今公演では日ごろ積み重ねた研さんの成果をたっぷりと見せてくれました。

「音の会」の「操り三番叟」では人形の三番叟を演じた澤村圀矢の身体能力の高さが印象的でした。圀矢は養成所出身ではないけれど、中村獅童の「超歌舞伎」に抜てきされ、片腕的な存在として活躍しています。三番叟では横に跳びはねる烏飛びなど人形振りで踊り、躍動していました。

「合同公演」の「傾城反魂香」では研修所十二期生の中村吉兵衛が又平を演じました。驚いたのは、手水鉢の裏側に描いた絵が表側に突き抜けたことを知って喜びを爆発させた後の表情の変化に、師匠である亡き中村吉右衛門さんと重なる場面が何度もあったことです。常に師匠の傍らにいて、その芸を見てきただけに、似てしまうのでしょうか。ちょっと懐かしい思いがした瞬間でした。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)