講談協会の定席を見てきました。新宿にある定員40人ほどの小さな会場でしたが、いっぱいでした。観客は高齢者が多かったのですが、メインの出演者も一龍齋貞花が86歳、宝井琴梅が83歳、一龍齋貞心が82歳で、合わせて251歳。今回は「三人合わせて二六〇歳」と題した特別企画でしたが、ちょっと盛った形です。

ただ、3年後には文字通り「二六〇歳」になるので、それまで毎年続けてほしいと思わせる公演でした。貞花は「赤穂義士本伝 殿中刃傷~内匠頭切腹」、琴梅は「寛永三馬術 出世春駒」、貞心は「中村仲蔵」。貞花は吉良上野介の浅野内匠頭への数々の嫌がらせを通して、二人の人間性を浮かび上がらせ、辞世の句を詠む切腹の場面も情景が目に浮かぶ語り口でした。琴梅は、急な階段を駆け上がるという試練に、曲垣平九郎と愛馬春駒との間には情愛が満ちていました。貞心は仲蔵の生い立ちに始まり、定九郎役の工夫、それを見た観客の反応など、緻密に語り、82歳とは思えない若々しさでした。

東京の講談の団体は講談協会のほかに、2代目神田山陽一門が講談協会を退会して設立した「日本講談協会」と、2団体が併存しています。ちなみに人間国宝の神田松鯉、人気の神田伯山は日本講談協会の所属です。会員は講談協会が約50人、日本講談協会は約30人。幕末から明治半ばまで全国的に人気があり、講談の速記本はよく売れて、大手出版社の「講談社」も講談速記本に由来します。戦後は人気が低迷し、伯山いわく「絶滅危惧種」と言われる時代もあったけれど、最近は若手の入門も増えています。大ベテランに人気者、そして若手が競演する講談界に注目です。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)