「つながる」「シェアする」「拡散する」。SNSを題材にした近未来の世界の話だが、すごく身近なことのように感じた。ツイッターやフェイスブック、誰もが発信できる自分の世界を「シェア」するのは楽しい。でも、その一方で…。

 全米でベストセラーになったデイヴ・エガーズの同名小説を映画化。行き過ぎたSNS社会の未来を描く。舞台は米国の西海岸にある世界一の巨大インターネット企業「サークル」。エマ・ワトソン演じる主人公のメイ・ホランドは念願がかない同社に入社する。カリスマ経営者ベイリー(トム・ハンクス)の目にとまったメイは新サービスのモデルケースに抜てきされる。

 首に小型カメラ、右手首にはタブレット、自身の24時間を公開することで、何百万人ものフォロワーを従えるスター社員に上りつめる。同社のモットーは「秘密は悪」。自分のすべてを公開し、見られ合うようになれば人間は善人に変わるのだという。「分かち合い」とは、聞こえのいい言葉だが、その裏腹に匿名の個人でいることが許されない世界に息苦しさを覚えた。【松浦隆司】

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