池井戸潤さんの原作ものといえば「半沢直樹」「陸王」…。堺雅人、役所広司らの思いっきり血走った目と張った声が記憶に残る。毎回見せ場が必要な連続ドラマならではの演出に、演技巧者が面白いくらいはじけて視聴者をひき付けた。

 池井戸作品の映画化は実は今回が初めて。2時間1本での起承転結ではそうそう修羅場は連発できない。熱い演技が得意だと思っていたが、TOKIO長瀬智也の「静かな闘志」が想像以上に絵になっている。

 長瀬が演じるのは小さな運送会社の2代目社長。トラックのタイヤが突然外れる人身事故で整備不良の汚名を着せられる。原因はトラック製造元の大手メーカーのリコール隠しではないのか? 銀行も絡み、おなじみ、町工場VS大企業の構図が、それぞれの組織内の人間模様も絡めてドラマより密度濃く描かれる。

 「元ヤン」の若手社員に慕われ、深田恭子演じる妻にほろっと弱みを見せる。小企業のオーナー社長が背負っているものがしっかり見えてくる。長瀬も39歳。年齢を味方にするとはこのことだろう。一見冷たいディーン・フジオカと高橋一生。敵か味方かの振幅を短時間でさらっと好演している。【相原斎】

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