のん(28)にとって、YouTubeで公開された19年の初監督映画「おちをつけなんせ」に続く2作目にして初の劇場長編で前作同様、脚本、主演も務めた。20年にコロナ禍で自身の音楽フェスを中止した悔しさと、自粛期間にエンタメの序列が下がるのを痛感したことをもとに、同年を舞台に卒業制作展が中止となった美大生の家族、友との関わりや葛藤を描いた。

映画やドラマでコロナ禍を具体的に描く作品は、いまだ少ない。あくまでフィクションだとして、登場人物も常時、マスクを着けていないが、その時点で現実と乖離(かいり)していると悩む俳優、作り手も少なくない。共感するか、映画でまでコロナ禍を見せられたと抵抗を感じるかは観客に委ねられるだろうが、コロナ禍で生きる人間の今の感情を、真正面から描いたことは評価すべきだろう。

のんが発案し「シン・ゴジラ」で特技を担当した樋口真嗣、尾上克郎両氏による特撮チームが映像化した、リボンの動きで表現した感情の動きも印象的だ。一方で、描きたいこと全てを詰め込んだ“おなかいっぱい感”も否めない。序盤の両親との関わり合い、葛藤を少し削ってでも、最終盤に尺を割いて欲しかった。せっかくラストで、コロナ禍をともに乗り越え、生きていくことへの希望を美しく描いているのだから…。【村上幸将】

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