耳の聞こえない両親を持つ子供を意味する「コーダ」という言葉を、ご存じだろうか? 今作は五十嵐大氏の自伝的エッセーを原作に、呉美保監督が9年ぶりに手がけた長編映画。主演の吉沢亮が耳の聞こえない両親のもとで育った息子、母を忍足亜希子が演じた。
主人公の大は両親が大好きで、手話を使って“通訳”もするが、成長していくにつれて、自分の親が周囲と違うことや偏見を持たれていることに気づく。中学に入ると反抗期も加わり、高校受験で志望校に落ちた際は、その全てを母のせいにしてしまう。上京して働き始め、ろう者と知り合うなどしていく中で、障がいのある親の元に生まれた自らが不幸だ、などという考え方も変わっていく。
吉沢は中学生からの大を演じるが、その端正な顔は、母明子を拒絶する場面では冷酷にさえ映る。呉監督は5日に都内で行われた完成披露上映会で「美しい人ですけど、彼の中にある、美しくない何かを自分の目で見たくて。この企画はフィットすると思った」と吉沢の起用理由を説明。その言葉通りの、違った顔が刻み込まれている。
何より忍足、父陽介役の今井彰人をはじめ、ろう者の役を全て、ろう者の俳優が演じているリアリティーは何ものにも代え難い。22年の米アカデミー賞では「コーダ あいのうた」が、トロイ・コッツァーが男性ろう者として初めて助演男優賞を受賞するなど作品賞、脚色賞の3部門でオスカーを獲得。それから2年…ろう者の俳優が活躍する場が、まだまだ少ない日本で、こういう映画ができた意義は大きい。【村上幸将】
(このコラムの更新は毎週日曜日です)




