安倍晋三元首相が奈良市での街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された元海上自衛隊員の無職山上徹也容疑者(41=奈良市)が派遣社員として勤務していた京都府内の工場の責任者が奈良市内で取材に応じ、仕事ぶりなどを説明しました。時間が経過とともに仕事へ「自分流」を押し通そうとする姿が浮かび上がりました。

山上容疑者は、20年10月から今年5月までフォークリフトで倉庫の荷物を運ぶ仕事をしていました。

大阪府内の派遣会社から紹介され、担当者が同行し、入社約1カ月前の面接を経て、採用となりました。派遣会社の担当者は「会話は『ですます調』で丁寧で、どちかかと言えば、おとなしい」と印象を語っていたといいます。

半年がたち、仕事に慣れ始めたころ、作業上の手順を守らなくなり始めたといいます。当初は上司の注意に耳を傾けていましたが、1年がたつと、指示通りにしないことが増え、入社1年3カ月後には社外のトラックのドライバーとトラブルが発生。今年1月のことでした。

ドライバーが、荷物を安全に運ぶために荷物と荷物の間に緩衝材(発泡スチロールの板)を敷くように指定。山上容疑者は「このやり方でも荷くずれはしない」と“自分流”を主張。ドライバーは「それでは運べない」と口論となりました。

「職務怠慢ともとれるような言動が出てきた」。この際は、同僚が「手順通りに積む」と作業を交代。他のドライバーとも荷物を積み込む際のトラブルがあったといいます。

銃撃事件に対し、責任者は「いろんな人がいる。最初は猫をかぶっていて、だんだん地が出てくるパターンもある。山上容疑者に限ったことではないが、それがエスカレートして、こんな大きな事件になるなんて想像ができない」と声のトーンを落としました。

4月半ば頃に「体調が悪い」と言って職場に来なくなり、退職した山上容疑者。責任者は最後に「話さないんですよ。仕事以外のことは…」とつぶやきました。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)