劇団で最も近年に誕生した宙組も今年、20周年。その歴史を名場面でつづり、新たな時代へのイメージも入れ込んだ宙組公演「ハッスル メイツ!」は8月2~13日に、兵庫・宝塚バウホールで上演される。主演は、来年「男役10年」を迎える和希(かずき)そら。14年の新人公演以来、4年ぶりのセンターに立つ。

 宙組20周年。会場のバウホールも今年40周年だ。

 「貴重な年に、貴重な経験を-と。ただただ、うれしく、責任をもって、ふさわしい公演にしなきゃ」

 実は“記念イヤー男”だった。劇団100周年だった14年に「ベルサイユのばら」で新人公演初主演。「エリザベート」初演20年の年に、その新人公演で悲願のルキーニ役をゲット。宙組20年の今年、最初の公演「ウエスト・サイド・ストーリー」で初の女役だ。

 「振り返ると、そうですね(笑い)。毎回『この記念すべき年に』って言っているような…。不思議なご縁がありますね。めぐり合わせ、たまたまにしても、もう感謝しかないです」

 子供のころから、ツキはある方だった。

 「ちっちゃいころ、くじ引きは、どんどん1等賞が当たって、こんなにいらん! みたいな(笑い)。小さなキャリーバッグや、ちっちゃい座椅子がいっぺんに2個当たったことも」

 もちろん、ツキだけではない。節目ゆえ、増える重圧を活力に変えられるタイプ。「やってやるぞって思う」と頼もしい。9年目。偶然にも芸名が「そら」で、宙組一筋で育った。その宙組にはまだ、生え抜きトップが誕生していない。

 「宙組魂を大切にしたい。宙組はいい意味で自由。舞台の上では上下関係は関係ない。下級生の時から、やりたいことを惜しまずにやれと教わって。自分を認めて、そのまま育ててくれる宙組が合っていた」

 宙組生としての誇りを胸に、センターに立つ今作。稽古場でも「いい空気」を感じる。ファンからの公募コーナーもあり、20年をメドレー形式で振り返る。そして、新たな挑戦もある。

 「変拍子が複雑に入り込んだコーラスや、私の夢だった“はだしでの踊り”もあります」。ダンスは武器。それゆえ「はだしで、身ひとつで伝え、表現する」ことに挑戦したかったと言い、今回実現した。来年は自らの節目。一人前の基準「男役10年」を迎える。

 「憎悪に満ちた役をしたい。もともとは純粋な人が、何かのきっかけで、すごく屈折した人になってしまうというか、複雑な(心情の)役をやってみたい」

 女役を経験し、視野も広がった。「見てくださる方が『次は何をするんだろ』って思ってもらえるような存在でいたい。幅広い役柄を頂くことが、表現者としてすごく楽しい」と話す。

 「(タイトルの)ハッスルって、熱さ-みたいな感じですけど、ちょっと昭和っぽいですよね。でも、ファンの方から『ぴったり』と言われたんですよ!」

 苦笑しながら「昭和って意味? なんですかね?」と続け、表情をゆるめる。「基本的に明るく、ポジティブに生きていますので」。ちゃめっ気と、底抜けの明るさ。武器は磨かれるばかりだ。【村上久美子】

 ◆バウ・Song&Dance Entertainment「ハッスル メイツ!」(作・演出=石田昌也氏) 宙組20年の軌跡を、歴代ショー作品から生まれた名曲、名場面を中心に描く。歴史を継承しながら、未来へ-伝統のバトンをつなごうと、若手メンバーが繰り広げるライブパフォーマンス。

 ☆和希そら(かずき・そら)10月5日、岡山市生まれ。10年3月入団。宙組配属。14年「ベルサイユのばら」新人公演に主演し、オスカル役。16年「エリザベート」新人公演で、大役のルキーニ。今年1月、東京公演「ウエスト・サイド・ストーリー」では、初の女役となったアニータを好演。身長168センチ。愛称「そら」「そーちゃん」。