雪組トップ彩風咲奈が、2人目の相手娘役に夢白あやを迎えた。新コンビでの本拠地お披露目「Lilac(ライラック)の夢路」「ジュエル・ド・パリ!!」は、22日に兵庫・宝塚大劇場で開幕した。宝塚公演では、109期初舞台生がラインダンスを披露している。新生雪組を率いる彩風からは「心の桜満開」宣言が飛び出した。宝塚大劇場は5月28日まで、東京宝塚劇場は6月17日~7月16日。

心の桜満開宣言で、新コンビのスタートを切る雪組トップ彩風咲奈
心の桜満開宣言で、新コンビのスタートを切る雪組トップ彩風咲奈

夢白との新コンビで本拠地お披露目。加えて、109期生の初舞台公演に。「私たちもここ(初舞台)から始まった」と原点への思いを深める。相手娘役は、研12の遅咲き就任だった朝月希和から、彩風と学年差10年の夢白に代わった。

「(初コンビは2月)御園座で『BONNIE&CLYDE』。かなり激しい作品からスタート。(夢白は)10期下ですけど、舞台度胸がすごい。(前作から長所が)よく出ていて、今回の稽古でもあまり学年差を感じない。いつも体当たりできてくれるので」

「BONNIE-」でははじけた役柄で、魂を震わせて歌い、演じ、表現する大切さを再確認したという。

「(前作は)まっすぐ、若さあふれる向こう見ずな役でした。そして、今回のハインドリヒもそう。情熱のままに一生懸命生きるってすてきだなって。舞台人として、私も情熱のまま解放して表現できたら」

今作芝居の舞台は19世紀初頭のドイツ。彩風は、騎士道精神を受け継ぐドロイゼン家の長男ハインドリヒにふんし、鉄道産業を発展させる夢を追う。弟たちから「まっすぐで向こう見ず。突き進む騎士のよう」と言われる役柄の設定は、トップの立場として“学び”もあった。朝美絢演じる次男フランツとは「大きな夢」か「小さな幸せ」か、対立する場面もあるという。

「兄弟で多少ぶつかったりもしますが、自分では『よし』として突き進んでいても、本当は相手に声をかけるべきだったとか、見逃してしまったことがあるんじゃないか? と。そんな心情が(自身にも)思い出されることはあります」

主人公へは違った意味での親近感も抱く。阪急電鉄などのグループを創業した小林一三氏が、宝塚歌劇団を創設し、今がある。

「何もない、レールを作るところから始めて、生み出していくのは本当に難しくすばらしい。ハインドリヒを演じていても、小林一三先生は発想力と行動力にあふれた方なんだなと、あらためて想像しています」

ショーはパリの名所をめぐる展開の王道のレビュー。「タカラジェンヌ1人1人が宝石という意味なのかな、と感じます」と考える。そこで-。好きな石を聞けば「やっぱり誕生石は意識しますよね、アメシストですね」と笑った。

今作ショーはプロローグから大階段が登場する。

「雪組は最近、始まりからエネルギー全開! みたいなショーが多かったんですが、今回は全体を通してシンプルな宝塚らしい華やかで優雅なレビュー。宝塚の男役ならこれをやってみたかったっていうような、プロローグから美しい男役の姿を優雅な『静の動き』で表現できる構成です」

新生雪組にふさわしいショーになりそうだ。夢白とのコンビで歩む道は-。

「あやちゃん(夢白)はいつも明るくて、ぶつかってきてくれるので、そのまま何も引っ込めることなく、いつでもぶつかってきてほしい。最終的にトップコンビとして、最高に美しく、いい物をお届けしたい。雪組の公演、作品を最高のものにしたい。そのために頑張っていこうと、あやちゃんにも言いました」

10年の学年差も感じさせない。思い描く理想の道。取材があったのは4月半ばごろだった。宝塚大劇場へと続く「花のみち」の桜も、ほぼ散った時期だ。

「(コロナ禍から)世の中的にも前へ進むという状況になり、今あらためて桜って本当にきれい、こんなに華やかだったんだって…。(新コンビで)お稽古に向かう気持ち、初舞台生といろんな新しい風が入ってきたからこそ、より一層そんな風に思いました」

新年度が始まる月に、新コンビでの本拠地船出を迎え、そこに初舞台生が出演する。その思いは-。

「桜の時期は終わり、夏へと向かいますが、私はいつまでも今年1年! 満開でいたいですね、心の桜が! このままずっと明るく元気に、ホントに満開な気持ちでいきたい」

満開宣言で、新生雪組を率いて新たな1歩を踏み出した。【村上久美子】

■芹香斗亜、宙組の次期トップに

彩風と同期、93期生の芹香斗亜が宙組の次期トップに就く。「発表の日に電話をもらい、心からうれしくて。何らかの形でいつか共演したいねって話しました」。宝塚音楽学校の受験時に知り合った。「受験番号が背の順(ともに現在173センチ)で決まるので、近くて。学校でも背の順が多くて、演劇の授業でも同じグループだったり」と振り返った。「私よりしっかりしていたし、自分の道を突き進んでいくと思います」とエールを送った。

◆ミュージカル・ロマン「Lilac(ライラック)の夢路」-ドロイゼン家の誇り-(作・演出・振付=謝珠栄) 19世紀初頭のドイツが舞台。プロイセン王国のユンカー(騎士領所有の貴族)、ドロイゼン家の長兄ハインドリヒ(彩風咲奈)は、5人兄弟で一丸となり、新産業の鉄道産業を発展させようと夢見ていた。ある日ハインドリヒは、音楽家志望のエリーゼ(夢白あや)と知り合う。その友人、鉄職人アントン(縣千)と出会い、光明が差す。ドロイゼン家の次男は朝美絢、三男に和希そら。

◆ファッシネイト・レビュー「ジュエル・ド・パリ!!」-パリの宝石たち-(作・演出=藤井大介) パリの名所をテーマにつづるレビュー。宝塚大劇場公演では、109期初舞台生がラインダンスを披露する。

☆彩風咲奈(あやかぜ・さきな)2月13日、愛媛生まれ。07年入団。雪組配属。新人主演5回。長身で脚長、小顔と抜群スタイルでも注目。雪組一筋で、21年4月トップ。相手娘役に朝月希和を迎え「CITY HUNTER」「Fire Fever!」で本拠地お披露目。昨年12月に朝月が退団し、夢白を2人目相手娘役に。今年2月の御園座「BONNIE&CLYDE」から新コンビ。身長173センチ。愛称「さき」。