若手から主力へ-。飛躍が期待される月組の珠城りょうが、1940年代のイタリア・シチリア島を舞台にした主演作「バウ・ミュージカル Bandito-義賊 サルヴァトーレ・ジュリアーノ」を熱演している。8年目で4月から新人公演を卒業する。野性味が必要な山賊役に巡り合い、男らしさを求めている。兵庫・バウホール公演は9日まで、東京・日本青年館公演は19~24日。

 ロングコートをまとい、客席に背を向けた珠城にスポットが当たり、主演のステージが幕を開ける。男役らしく、男くさく-。新人公演学年を終え、新年に掲げた目標そのまま、有言実行とばかりに、その心意気が伝わってきた。

 「今まで男っぽいって言っていただいても、あまり男くさい役はなかった。今回は銃、ライフルも出てきて、スーツ物でもあり、男っぽさが追求できるかなって。私の持ち味はアイドル系でも、フェアリーでもない。骨太な男らしさを」

 今公演は、第2次世界大戦直後のシチリア島が舞台。山賊として名をはせ、実在した義賊の半生を描く。

 「映画『ゴッドファーザー』とか、マフィア作品を見て、イメージ作り。もう新人ではないので、妥協せずに、期待以上の成果を出さないといけない」

 意識の持ち方も変わった。最近は細身でスタイリッシュ、アイドル性の高いスターが多いが、珠城が目指すのは男くさい男役。今作で参考にしたハードボイルド劇の世界観は、そのまま男役としての自身の方向性にもつながっていく。

 「単純に舞台が楽しいと思えるようになった。今までは責任感、プレッシャーを感じすぎていた。一生懸命に、ちゃんとやらなきゃって思いすぎて、舞台を楽しめていなかった。だから『マジメすぎておもしろくない』って言われていたけど、吹っ切れたんです」

 きっかけは昨年の「PUCK」。トップ龍真咲が妖精にふんし、珠城は、初演で天海祐希が演じた主人公と絡む主要キャストのロックシンガー役だった。パワフルで型破り、夢を追い実現させた青年だった。

 「(PUCKで)何もかもが変わりました。すごく元気な役柄だったので、公演の疲労感は、そのキャラクターに助けられて爽快感というか、気持ちのいい疲労感を感じました」

 役柄に入り込み、勢いのまま演じると、ファンから「変わった」と言われた。

 「これまでは、気負っている自分が皆さんに見えていたんでしょうね。舞台を心より楽しめました」

 重要な役を任せられ、舞台に出ている時間が増え、体力の重要性も痛感した。

 「でも私、もともと体育会系で、体力はあると思う。小学時代からハンドボール、陸上、水泳、バスケットボールといろいろやっていましたから」

 新人からスターへと、歩を進めると同時に、新たな自分も開拓するつもり。

 「新人公演を卒業したら、時間もできるので、たくさんテレビ番組を見られそうで楽しみ(笑い)。テレビ、好きなんですよ。ピラティスもやってみたい。劇団レッスンでもあるんですけど、体のバランスを整えられたら。新しいレッスンを始めたいです」

 プライベートも充実させ、大人の男へと自分磨きを続ける。【村上久美子】

 ◆バウ・ミュージカル「Bandito(バンディート)-義賊 サルヴァトーレ・ジュリアーノ-」(作・演出=大野拓史氏) 1940年代のシチリア島を舞台に、山賊として名をはせた男の生涯を描く。連合国軍の占領下にあった島では配給制度を悪用して、マフィアが闇市を開いていた。青年ジュリアーノは憲兵を撃ち、身を追われる。故郷に落ち延びた後、群盗のリーダーに押し上げられ、義賊と呼ばれる存在になる。

 ☆珠城(たまき)りょう 10月4日、愛知県生まれ。08年「ミー アンド マイ ガール」で初舞台。月組配属。10年「スカーレット・ピンパーネル」で新人公演初主演。13年5月「月雲の皇子~衣通姫伝説より」でバウホール初主演。昨年9月「PUCK」では主要キャストのボビーを好演。身長172センチ。愛称「りょう」「たまき」。