10代理論。普段、何かとお世話になっている声がとりわけ大きい広告代理店の方がキャスティングの話をするたびに聞いてくる。「監督、その子のデビューはいつですか?10代ですか?20代ですか?」と。正直、毎回聞き流していたがいま一度しっかりと考えてみようと思う。当たり前だが、どのジャンルでも早く始めたほうがいいに決まっている。

先日、元Jリーガー那須大亮氏のYouTubeにて、天才談議として柿谷曜一朗選手(名古屋)と宇佐美貴史選手(G大阪)がインタビューに答えていた。いつ頃プロを意識したのか?の質問に対し、2人とも中学2年生だと答える。その後、高校2年生でプロデビュー、Jリーグで活躍した後、海外に渡り日本代表まで当然のように上り詰める。当たり前のように話していることに那須氏同様、ただただ驚く。

そこで芸能界。子役から活躍する子もいるが、大半は高校卒業時に進路に迷う中、夢であった芸能界にチャレンジしてみようと考える。運よくスカウトや何かしらのオーディションに受かればいいが、通常は事務所の養成所なんかに入り、そこで初めて演技を経験し、その後、映像ではエキストラや端役、舞台では小劇場などに立つことからはじまる。芝居の輪郭がみえはじめた時にはすでに30歳。そこからひと踏ん張りしたいところだが、ライバルたちは皆それ相応のキャリアを積んでいたりするのでチャンスはより少ない。なのでこちらも早いに越したことはないが、それよりも大事なことがある気がする。

そこで今回取り上げる俳優は、現在ドラマ「コントが始まる」(日テレ系)に出演中の仲野太賀(28)。映画ファンにとっては以前からおなじみであり、最近ではドラマにもほぼ毎クール出演。あえてちなみにと書くが、お父さんは中野英雄。アラフォー世代以上には「愛という名のもとに」(フジテレビ系)のチョロ役といえばわかるだろうか。

息子である太賀は、親の関係からなのか13歳の時に芸能界入り、その後コンスタントに俳優活動を行うが、そこまで日が当たっているとは言えず、よくいる若手俳優の一人といったところであろうか。マスコミなどで2世俳優と騒がれてもおかしくはないが、元々「太賀」名で活動していたこともあり、父親のことを知らない人も多いはず。

俳優として強く認識したのは16年のドラマ「ゆとりですがなにか」(日テレ系)の山岸役。岡田将生演じる坂間の後輩社員であり、何かあるたびにその物言いがイライラとさせる役どころ。どうやっても視聴者に憎まれるキャラなのに、気が付けば「山岸ですがなにか」というスピンオフドラマまで作られる人気者に。当たり役といえば当たり役だが、当時ドラマを見ていて思ったのは、キャラクターの受ける特徴をつかみ、表現する感覚が優れているのだと思った。放送中の「コントが始まる」においてもトリオ内においてのムードメーカーをこれでもかとうまく演じている。背景として、出演作を見ると映画にドラマ舞台と150本以上あり、同年代の俳優に比べ圧倒的に多いこともわかる。

改めて10代理論。早く始めることで場数が増えるのは間違いない。そしてプロ意識を早く持つことができればより才能が開花するのかもしれない。その点、親が俳優であり場数を踏んだ仲野太賀の才能がここにきて大きく開花したことは必然である気がする。今後のさらなる活躍に大いに期待します。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画『リュウセイ』の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営。今夏には最新作「元メンに呼び出されたら、そこは異次元空間だった」が公開予定。