歌手西城秀樹さん(享年63)が死去し、公になった17日はテレビ各局も訃報を大きく伝えた。子供のころから歌番組の当たり前の存在として見てきた世代としては、あらためて画面で見るスター性と歌唱力に圧倒されるばかり。当日夜のニュース番組は全部見たけれど、編集は「傷だらけのローラ」派もあれば「ヤングマン」派もあって、伝える側のヒデキ愛もいろいろだった。勝手な目線で振り返ってみた。

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 ◆映像満載、ローラ派の編集がかっこよかった日本テレビ「NEWS ZERO」

 西城秀樹に関してセンス抜群。冒頭はカックラキン大放送での「ヤングマン」で、星条旗バックのセーラー衣装が申し分ない。ザ・トップテンなどの自社素材やコンサートの取材映像などから、ヤングマン、ブーメランストリート、ギャランドゥ、情熱の嵐、激しい恋、傷だらけのローラ、恋する季節、薔薇の鎖の8曲で他局を圧倒。スタジアムでの宙づりなどド派手演出の先駆者ぶりと、2年連続でレコ大歌唱賞に輝く「絶唱型」ボーカリストとしての才能もきちんと伝えていた。他局の「寺内貫太郎一家」から「ちびまる子ちゃん」まで、短い時間でよくここまで。CM前にローラ、CM明けにローラ、結びにローラ。選曲も使いどころも完璧だった。

 ◆本人不在、締め方が暗すぎるTBS「NEWS23」

 冒頭、中盤、終盤とヤングマンが3回出てくるヤングマン派な編集。ザ・ベストテンとレコード大賞を素材に持つ局だけに期待したが、紹介したのはかなり短くつまんで5曲。全盛期の歌唱→寺内貫太郎一家→バーモントカレー→脳梗塞との戦い→還暦イベント、と素材を時系列に並べただけで、アーカイブ力が不発だった。ベストテンでヤングマンが9999点を出した瞬間と、寺内貫太郎一家の映像に救われる。最後は黒柳徹子さんと樹木希林さんのコメントでシリアスに終了。スターの訃報は、本人が最も輝いていた時で鮮烈に締めて、喪失感に浸らせてほしい。

 ◆まさかの「さいごうさん」で緊張が走ったテレビ朝日「報道ステーション」

 富川悠太アナがど頭で「野口五郎さん、郷ひろみさん“ら”とともに新御三家と称され」とし、西城さんを「さいごうさん」。これも大スターの訃報の緊張感かも。まとめたVTRは約11分だったが、ベストテンのような昭和の歌番組がない同局は歌手の訃報は常に不利。今回も「徹子の部屋」のトークや松竹から借りた映画「愛と誠」など、歌以外の映像で編集する流れだった。ローラとヤングマンは民放持ち回りの放送だった日本歌謡大賞から。最後はありし日の写真などをバックに「ブルースカイブルー」。センチメンタルにフェードアウト。

 ◆3分で終わったフジテレビ「FNNプライムニュースa」

 「夜のヒットスタジオ」「ミュージックフェア」を持つ局だが、曲数はいちばん少ない4曲。VTRの最後をはつらつとしたヤングマンで締めたのはTBSよりはいいものの、制作がヒデキを知らない世代なのか、4曲の中にローラがなくて腰が抜けた。さらに、ヤングマンとブーメランストリートはリハビリから復帰後のステージのもの。全盛期の映像を探せなかったのだろうか。全体で3分というのも、NHK9分、日テレ20分、TBS8分、テレ朝11分と比べてかなりあっさり。長さの問題というより、あらゆる部分でもうひと頑張りしてほしかった。

 ◆ガチのローラ派、異例のCM放送が上等だったNHK「ニュースウオッチ9」

 ローラで始まりローラで結ぶローラ派。冒頭のローラは紅白歌合戦に初出場した74年のステージで、快傑ゾロのような奇抜な衣装をこんなにかっこよく着こなせるのはヒデキかジュリーしかいないだろうと懐かしい。音楽評論家湯川れい子さんの解説、リハビリ担当者の証言、新橋のカラオケ店の盛り上がりなど取材が厚い分、肝心の歌映像がローラ、ヤングマン、ブーメランストリートくらいだったのが残念。“ヒデキ、感激”のバーモントカレーのCMもしっかり。NHKで「ハウスバーモントカレーだよ~」の企業名と商品名が流れること自体が、西城さんの偉大さを物語っていた。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)