ドラマの母親役などで親しまれた女優の加藤治子(かとう・はるこ)さんが2日午前7時7分、心不全のため、東京都世田谷区の自宅で亡くなった。92歳だった。遺志に従って、葬儀・告別式は家族葬で行い、お別れの会などの予定はないという。

 09年のTBS系ドラマ「浅見光彦シリーズ」出演を最後に活動を控え、自宅で1人暮らしをしていたためマネジャーや知人女性が交代で面倒を見ていた。04年に不安定狭心症で舞台「8人の女たち」を降板したほか、87歳の時にがんが見つかって余命5カ月と宣告されたが、放射線治療で完治した。最近は大きな病気はなかったが、3年前に高齢のため体調を崩し、昨年から自宅療養を続けていた。最近になって容体が悪化し、2日午前に眠るように息を引き取った。

 1937年(昭12)に松竹少女歌劇団に入団。39年に東宝映画に移り、榎本健一さんと共演。後に結婚、死別した劇作家加藤道夫さんが結成した新演劇研究会に参加した。戦後は文学座の舞台「なよたけ」のヒロインで評価を得た後、劇団雲の結成に参加。60年代の人気ホームドラマ「七人の孫」以降、穏やかな中に強さを秘めた昭和の母親役で人気を集めた。代表作は向田邦子さんのドラマ「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」、映画「花いちもんめ」「マルサの女」など。

 近年はアニメ「魔女の宅急便」「ハウルの動く城」で声優を務め、10年に山田洋次監督の映画「おとうと」に出演。02年に舞台「こんにちは、母さん」で紀伊国屋演劇賞を受賞し、勲4等宝冠章も受章。58年に俳優で演出家の高橋昌也さんと再婚、73年に離婚した。

 ◆「寺内貫太郎一家」 1974年(昭49)にTBS系列で放送されたホームコメディー。脚本は向田邦子。3代続く「寺内石材店」を舞台に、カミナリおやじとその家族が織り成す日常を描いた。出演は小林亜星、悠木千帆(樹木希林)、加藤治子、浅田美代子、由利徹、藤竜也ら。平均視聴率は31・3%。