「ツィゴイネルワイゼン」など鮮やかな色彩感覚と様式美あふれる作品で知られた映画監督の鈴木清順(すずき・せいじゅん)さん(本名清太郎=せいたろう)が13日午後7時32分、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患のため、都内の病院で死去した。93歳。

 鈴木清順監督の訃報が伝わった22日、日活時代の作品に主演した俳優たちから悼む声が相次いだ。

 デビュー間もない66年に「東京流れ者」に主演した渡哲也(75)は「芝居の『し』の字も分からなかった時で、監督の言うままに動き、手取り足取り教えていただいた」と振り返った。演出については「ワンシーンごとに色ががらりと変わる。斬新でした」という。「映画は1本しかご一緒しませんでしたが、『流れ者には女はいらない』というせりふとともに、新しい感覚の監督だと思ったことを今も強烈に覚えています。お亡くなりになって残念です」としのんだ。

 「踏みはずした春」「関東無宿」など多くの作品に主演した小林旭(78)は「日活時代から、語り尽くせぬほどの思い出がありすぎて言葉がありません」とショックを受けていた。

 高橋英樹(73)は「けんかえれじい」などに主演した。「さまざまな作品でお世話になりました。ユニークな演出法で、当時の若い私には、とても勉強になりました」と感謝の思いを言葉にした。

 「関東無宿」「東京流れ者」などに出演した松原智恵子(72)は「18歳のころ、なかなかお芝居ができない私に『こうやってやるんだよ、智恵子』と自ら倒れこんでせりふを言いながら教えてくれたことを覚えています。こんなことをしていただいたのは、私だけじゃないでしょうか」。最後に会ったのは13年9月、90歳(卒寿)のお祝いで上映会をした時で「思い出を話し合ったり、日活の若い監督に教えたりしていました」。また「おうちに伺ったこともありますが、奥様は若くて楽しそうで、いい雰囲気でした」とプライベートで見せる素顔も魅力的だったという。