6月中旬、加山雄三(81)が主催する「ゴー!ゴー!若大将FESTIVAL 2018 in TOKYO」を取材した。

 4月に火事で愛船を失ってから、初めて「光進丸」を歌ったイベントだ。あれから2カ月半、加山の悲しみはいかばかりかと思っていたら、とても前向きで驚かされた。逆にこちらがパワーをもらってしまった。

 イベント前に行われた会見で、加山はまず、寝ずの消火にあたった地元の人々や海上保安庁に感謝を述べた。「人的被害もなく、自分で沈んでくれたから、(水で冷やされて)燃料タンクもはっちゃけなかった」と大きな被害がなかったことにホッとしているようだった。

 その後「僕は船と一緒に育ってきたから、相棒を亡くしたような気持ちでいっぱいだけど。でも歌は残るし、心にも残る」と気持ちを語った。ちょっとだけしんみりした空気になったが、「(進水してから)36~37年。人間で言うと老齢なんだ。(小声で)金がかかる」と笑いで和ませた。

 新しい船についての構想も披露した。「やる気だけは残してます。でも道楽的なことじゃなくて、人の役に立つものが作りたいっていう気持ちになってきた。作るとすれば災害救助船」。夢を語り出すと止まらない。「全部エコで、再生可能エネルギーだけでできるかどうかっていう設計は、やってた。で、どんどんアイデア出てくるでしょう? 全然燃えない木ってのもあるし。液体ガラスってのを開発した人もいるんですよ…」と続けた。

 一緒に会見に出席したスチャダラパーのBose(49)から「これ、長いですよ~」とやんわり制止されると、「ハハハ」と笑った。

 船の大きさは「今の段階で98メートルくらい」。想像を超える大きさに取材陣も沸いたが「だって、でっかくないと被災した人を乗せられないでしょう」と口調は真面目だった。

 81歳にして演歌にも挑戦する。27日にアルバム「演歌の若大将~Club光進丸」を発売し、「4回目の成人式にプラス1になって、また新しい1年。リボーンって感じ」とやる気に満ちている。船をなくしたことも肯定的にとらえているようで「新しい気持ちになるためのきっかけになったし、演歌もやるし。逆行しているようだけれども、それが新しい世界になるんだと、そんな気持ちで、えらそうに言ってます」と、最後にはちゃめっ気も見せた。

 悲しみを強がりで打ち消している風ではなく、まったく素直な言葉だったと思う。年齢を重ねてなお、この前向きさを維持していることに感動した。