フジテレビ元常務でドラマ「北の国から」のプロデューサーだった山田良明氏(71)が、つかこうへい原作の舞台「新・幕末純情伝」(7日初日、東京・新宿の紀伊国屋ホール)で本格的に俳優デビューする。

 70歳の決断は、フジテレビから共同テレビ社長を経て、相談役も退き、時間に余裕ができたから。何をやったら楽しいかを考えた時に「俳優」が思い浮かんだ。そんな時に旧知の柄本明に出会い、妻で女優の角替和枝が主宰するシニア向け教室に通い始めた。今年2月、教室の発表公演に出演した時、フジテレビ時代の後輩で「新・幕末」演出の河毛俊作氏も観劇。「一緒にやりますか」と聞かれ、「やる」と即答した。

 「河毛は『お世辞で言ったのに』とこぼしたけど、台本を読んで、若い人がやる主要な役以外で、面白いと思ったのが岩倉具視。やらせてもらえるか頼みました」。「新・幕末」の岩倉はエキセントリックなゲイの設定で、赤ふんどし姿にもなる。「何でもやるつもりだった。でも、稽古は地獄の日々です」。

 山田氏はヒット作連発の大物プロデューサーだった。「当時は、役者を見ても、おれならこうやる、できると思っていたけど、実際にやってみると、頭で描いたことができない。せりふ覚えも若い人より5倍時間がかかるし、声もよく出ない。体も思った通りに動かず、帰りたいと思った」。

 しかし、ストレッチに体が悲鳴を上げる日々にも「安定したくないと思ったのが根底にある。高校時代は演劇部で、俳優になりたかった。今回の経験で、もう1回別の人生があったんだと思った」と充実感を口にした。9月には、教室の発表公演で女形に挑む。「女形をやりたかった。頭の中に杉村春子さんのイメージがある」。俳優を心底楽しんでいる。【林尚之】

 ◆山田良明(やまだ・よしあき)1946年(昭21)12月18日、大阪生まれ。慶大商学部卒業後、69年にフジテレビ入社。ドラマの現場が長く、「北の国から」「101回目のプロポーズ」「東京ラブストーリー」などヒット作を生みだした。フジテレビ常務を経て、共同テレビ社長となり、昨年同社相談役を退いた。