音楽座が8月4日にVR(ヴァーチャルリアリティー)とコラボしたミュージカル「リトル・プリンス」(5日まで)を東京・青海の日本科学未来館で上演した。

 同作はサン・テクジュペリの「星の王子さま」をベースにした作品で、93年に初演された音楽座の代表作の1つでもある。今回、飛行士の回想シーンはVRを使って表現し、王子が自分のことを語る場面ではライブのミュージカルで演出。20台のVRを装着した20人の観客が、同じバーチャル体験を共有できるという珍しい公演だった。

 音楽座側はVRとライブの融合について、通常、舞台を見ているだけで感じられない没入感を生み、登場人物の1人になったような気持ちで鑑賞できるなど、今までとは違ったミュージカルを生み出せる可能性があるとしている。昨年2月のトライアル公演に続くものだが、VRの性能もかなり向上し、かなり挑戦的な公演でもある。

 実際に出演した王子役の森彩香は「VRを付けると、観客の方との距離は縮まり、より近くなる。それまでは私にとってVRは遠いものだったけれど、これで何かが変わるかもしれない」。飛行士役の広田勇二は「VR好きなので興味はあるし、可能性も感じる。ただ、装着した人と、付けない人では見たものが変わってくる。試行錯誤しながら、よりいいものを作っていきたい」と話した。

 VR装着した観客と、装着しない観客で、見るものが違ったり、VR装着に時間がかかり、舞台進行が中断されるなど、課題も多い。一方で、装着すると、出演者が目の前で演技をしていて、多様な映像体験もできるなど、将来的な可能性も感じることができた。ミュージカル界は漫画、アニメを舞台化した2・5次元ミュージカルが流行しているが、このVRもミュージカルのさらなる多様化の先駆けになるかもしれない。