元劇団四季の女優雅原慶(34)が12月13日、東京・ヤマハ銀座スタジオで自身3度目のコンサートを行う。劇団四季時代は数々の作品で主要な役をこなし、劇団の顔として活躍してきた。「劇団四季でやりたかった役は全てやった」と、次の高みを目指すために16年末に退団。今は新しい挑戦を続けている。今回日刊スポーツの取材に応じ、その思いを語った。

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現在はドラマや舞台などでも活躍している。劇団四季にはなかった風にふれ、毎日が新鮮だ。

「ルールもみなさんの美学や信念も全然違います。そこから刺激を受けています。劇団四季では浅利慶太さんのメソッドでずっとやってきたので、そういう刺激が楽しいです」

劇団四季では作家陣が作った作品を忠実に再現することが求められた。

「今は座長さんがいて、そのお客さんたちを満足させるためにどういうシーンを作るかで物作りをしているので、すごく新鮮です。その役者さんが一番魅力的に見えるようなシーンを演出家が作ることもあって、こういう作り方もあるんだと勉強しています」

コンサートは3回目だが、そもそもコンサートをやろうと思ったきっかけは何なのだろうか。

「ミュージカルをやってきたけど、歌は芝居の中の一部という感覚だったので、歌手という認識はなかったんです。曲を曲として提供する人と、芝居の中で1曲提供するのは別ものだと思っていました。でも、いろんな方から『もう1度聞きたい』という声をいただいて、もしかしたら自分に求められているものがそこなのかなと。退団前は劇団がやってくださいということをやっていて、自分の強みとか考えた事がなかったんです」

今回は昭和歌謡にも挑戦する。ミュージカルと共通点があるという。

「この時代の歌謡曲は歌詞がいいんです。“ドラマを伝える”というのが共通点だと思っていて、ミュージカルでは歌をセリフとしてドラマを伝えることをしてきたので、同じ世代の歌い手さんよりはきれいに歌えるかなという自負はあります。特に浅利さんは美しい日本語の魅力を確実に伝えることを大切にしてきた方なんです。『お前の感情なんかいらない』といつもしかられていました。そういう考えの怖い人たちの中で育ってきたので(笑い)」

今後、女優と歌手の比重はどうなるのだろうか

「退団直後、歌手はゼロでしたが、今は3割くらいまできています(笑い)。自分がやりたいことよりも求められるものをやった方がいいと思っているので、求められるのであれば歌わせていただこうとかなと」

劇団四季在籍中は与えられることをこなすので精いっぱいだった。だが、外の世界に触れ、自分と向き合うことで新しい縁ができ、その縁が広がっている。

「過去2回はセルフプロデュースでした。演出してくれる人もいませんでしたから。でも、今回は演出の方に入っていただいています。過去2回の縁でご紹介いただいて。選曲も含め、今回はわりとゆだねています」

プライベートでは趣味がないという。もっとも、趣味も持てないくらい忙しかった。

「劇団四季時代は、休みの日はとにかく喉と体のケアでした。年間250ステージくらいやっていて、ステージがない日の半分くらいはリハーサル。1週間に1、2日が休演日でしたが、そのほとんどは病院やマッサージだったので、趣味をする余力、体力、気力がなかったですね」

退団して時間はできたが、まだ趣味はない。

「頑張って趣味を探そうとしている自分がいて、その時点で趣味じゃないなって。仕事が一番好きで、一番キラキラしているのかな(笑い)」

劇団四季ではアドリブは一切なかった。その影響もあって、実は過去2回のコンサートではMCを全て用意していた。

「この曲の前にこの話をしたら入りやすいとか、実は緻密に原稿を書いていて、小さい時計も置いていました。自分の中の小さなチャレンジなんですけど、今回はあまり緻密にしないで、テーマを決めるだけでフリーに話してみようかなと…(笑い)」

劇団四季を退団後、大小さまざまな挑戦を続け、日々成長している。「新しい私をぜひ見に来てください!」と話す目は輝いていた。