歌手槇原敬之(50)が13日、覚せい剤取締法違反(所持)と医薬品医療機器法(旧薬事法)違反の疑いで警視庁に逮捕されたことで、芸能界は大混乱に陥った。今年はデビュー30周年イヤーで、ベストアルバムの発売のほか秋からは全国ツアーが予定されていた。また、歌手への楽曲提供や、番組テーマ曲の制作など数多く手掛けており、各局が対応に追われた。

   ◇   ◇   ◇

槇原容疑者が最初に逮捕され、執行猶予開けの05年10月、本紙「日曜日のヒーロー」でインタビューした。アーティストの取材の場合、芸能活動以外の質問に事務所側が口をはさむケースが多いが、同容疑者は事件について口をつぐむことはなく、自ら積極的に語ったことが印象的だった。

03年のSMAPのヒット曲「世界に一つだけの花」については「僕が歌っていたら、こんなに売れなかったと思います」と客観的に見ることができた。さらに「僕はいろいろあったし、自分という人間が歌うことで、この(曲の)考え方が汚いものだと思われるのは、耐えられない。清潔感があって人気者のSMAPに歌ってもらえば、聞こうと思ってくれる人がいっぱいいるだろうと思い、願いをこめて託しました」と語り、自身が犯した罪の重さも十分に理解していた。

さらに、留置場での出来事も赤裸々に語り、自由に鉛筆を持つことが許されない中「何が正しいことか、何が間違っていたか」を考え続けたという。それも、取材する我々の目をあえて見つめながら答えてくれた。自身を客観視できていたし、その罪がどれだけ多くの人に迷惑をかけたのかも身に染みて分かっていた。

そんな人間でも、薬物をやめることはできなかった。覚醒剤の恐ろしさに身が震えるばかりだ。【竹村章】