お笑いタレント東貴博(51)が、4月に駒大法学部政治学科に入学する。今年1月に社会人特別入試で受験して合格した。

現在、14日まで東京・明治座で上演中の舞台「よみがえる明治座東京喜劇-ニッポン放送『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』全力応援!!-」の芝居「こちとら大奥様だぜぃ!」に出演中。お笑いコンビ、Take2の相方である深沢邦之(54)の妻でもある、女優田中美佐子(61)を相手に熱演中だ。

役柄はさすらいのぐれ五郎。瓦版屋に出入りして、大名の庄毛内藩から家出した奥方様の田中と、ちょっぴり恋心が生まれるシーンもある。「僕にとっては田中美佐子さんは、相方の嫁の深沢美佐子さんですから」と言いながらも、いいムードを醸し出している。

テレビ、ラジオ、舞台と活躍中の東だが、他の芸能人と同じように、この1年間は新型コロナウイルスの影響を大きく受けた。

04年の伊東四朗(83)を中心にした「伊東四朗一座」旗揚げから毎年出演してきた、東京・新橋演舞場の三宅裕司(69)座長公演「熱海五郎一座」の昨年6月の舞台が中止になった。

09年から座長としてプロデュース、演出、出演してきた劇団「FIRE HIP'S」の8月の公演もなくなった。

“withコロナ”の生活様式の中、トークを配信するためにYouTube「東MAXチャンネル」を開設。10月には短編映画「repeat~人間のあやまち~」で初の映画監督に挑戦、YouTubeで配信した。

コロナ禍で、ただ手をこまねいているだけでなく、あれこれ手を打つ。それも、東の中に流れる“座長のDNA”のなせる業(わざ)ではないだろうか。

東京の喜劇の復興を旗印に掲げた明治座公演だが、東ほど、この公演の出演者にふさわしいキャストはいない。父親は元トリオスカイラインで「東八郎劇団」を旗揚げ、88年に亡くなった東八郎さん(享年55)。東さんは昨年3月に亡くなった志村けんさん(享年70)の「バカ殿」シリーズでも、初代の家老役を演じていた。

東の師匠は八郎さんの弟子でもある萩本欽一(79)。「欽ちゃん劇団」出身の東は、東京の軽演劇の出で、日本のテレビ界を背負ってきた欽ちゃんの正統な後継者だ。

明治座公演を企画した放送作家・高田文夫氏(72)のDNAも継いでいる。高田氏が89年からパーソナリティーを続ける、ニッポン放送「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」の火曜日のパーソナリティーをバトンタッチされている。01年に小滝詠一名義でリリースした、大瀧詠一の代表曲「A面で恋をして」の替え歌「冷麺で恋をして」は高田氏のパロディー作詞だ。八郎さん、欽ちゃん、伊東、三宅、高田氏、そしてちょっとだけ志村さんと、東京のお笑いのハイブリッドが東MAXだ。

明治座公演の「こちとら大奥様だぜぃ!」の脚本、演出は出演者でもある、同年代の宅間孝行(50)。

東は「他人の演出の芝居に出ると『こういうやり方もあるんだ』と発見がある。やり方なんて、人によって全部違うんじゃないかと思う」と話している。それも、これも全てが“withコロナ”“アフターコロナ”の糧になるはずだ。

東京のお笑い界における東の立ち位置は“若い者頭”。若い者の先頭に立って、年長者を助け、後輩たちを引っ張ってきた。4月からは大学生。今までと違う、若い世代のエネルギーに触れて、また違った新しい世界を見せてくれるに違いない。【小谷野俊哉】