米映画界最高峰の祭典、第93回アカデミー賞授賞式が25日(日本時間26日)、米ロサンゼルスで行われ、「ミナリ」に出演した韓国のベテラン女優ユン・ヨジョン(73)が、韓国人俳優として史上初のオスカーに輝いた。

アジア系俳優の受賞は、1957年公開の「サヨナラ」で助演女優賞に輝いたナンシー梅木さん以来64年ぶり2人目の快挙となった。プレゼンテーターを務めた俳優ブラッド・ピットが、ヨジョンの名前を呼ぶと両手を合わせて感謝し、登壇後は「ピットさん、やっとお会いできましたね」と笑顔を見せた。受賞スピーチでは、「競争は好みません。たぶん(他の候補者の)皆さんよりもラッキーでした。韓国の俳優に対するアメリカのおもてなしかもしれません」とジョークを交えて他の候補者たちをたたえ、子供たちのために一生懸命仕事をしたからオスカーが取れたと2人の息子に感謝した。

一方、6部門にノミネートされていたリーマン・ショックで住まいを失い、車上生活をしながら季節労働の現場を渡り歩く女性を描いた米ノンフィクション小説「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を基にした「ノマドランド」は、作品賞、監督賞、主演女優賞の3冠に輝いた。主演のフランシス・マクドーマンド(63)は、「ファーゴ」(96年)、「スリー・ビルボ-ド」(17年)に続き、3度目となる主演女優賞を獲得。「この映画をできるだけ(劇場の)大きなスクリーンで観てください。この映画をウルフにささげます」とスピーチし、狼の遠吠えをして受賞を喜んだ。また、メガホンを取った中国出身のクロエ・ジャオ監督(39)は、女性監督としては史上2人目、アジア系女性としては初となる監督賞受賞の快挙となった。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で2カ月ほど延期されて開催された今年の授賞式は、ユニオン駅に会場を移し、例年の会場であるハリウッドのドルビー劇場のほか英ロンドン、仏パリなど世界各国とも中継をつないでの開催となった。今年は多くの映画賞がリモート開催となる中、検査やソーシャルディスタンスの確保など感染対策を講じて対面で行われたが、史上最高齢で主演男優賞を受賞したアンソニー・ホプキンス(83)ら数人が授賞式を欠席した。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)