菅義偉首相が3日、自民党総裁選(17日告示、29日投開票)への不出馬を表明し、30日までの総裁任期を務めて退陣する意向を示した。官房長官時代から約9年、菅氏に扮(ふん)し続けてきた社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」の山本天心(58)は「就任から1年…ネタに枯渇することがないくらい、ツッコミ所満載の政権だった」と、独自の視点で菅政権を振り返った。

山本は、菅氏が安倍晋三前首相政権下で官房長官を務めた7年8カ月、そして首相になった1年と計8年8カ月、菅氏のモノマネを続けてきた。首相になってからの1年を振り返り「ネタを欠くことがなかった。いいネタを作っても、すぐに次の問題が起きるから、作ったネタが使えなくなる」と苦笑した。

問題の一例として、2月に「週刊文春」で報じられた、放送事業会社「東北新社」に勤める菅氏の長男が放送行政などを所管する総務省幹部に個別接待をしていた件を挙げた。「ちょっと、ネタに困った時、息子の問題が出てきました。でも、息子でネタを作ったら、また次の問題が出て…ネタ作りには、実にいい総理。支持率が、ずっと低いというのも、ザ・ニュースペーパーにとってネタになるんですよ」と率直な感想を語った。

公演で菅氏に扮して、壇上から観客に“即席世論調査”をしたこともあった。「500人いたら、支持すると手を挙げる人は10人くらい」と振り返る一方「支持率が低くて悩んでいます。補償金200万円配るから支持しますか?」と呼び掛けると「客席のほとんどの観客が手を挙げた」とも語った。

菅氏に扮した当初は「『かんさん』などと間違えられた」というが「9年近くやって、愛着がないかと言ったらウソになる」と突然の不出馬、退任の意向を示したことに複雑な感情を吐露した。モノマネを演じるためにウオッチし続けた視点から、3日午後、記者団の取材に応じた菅氏を見ていて「今までで1番、すがすがしかった。言葉も1番、ストレートに伝わった。初めて報道陣とも意思疎通が出来たような感じが伝わった」と感じたという。

そして「菅さんも、この1年はコロナ対策しかやっていない。どんなに医療にたけた人でも、世界的なパンデミックだから難しいと思う。貧乏くじを引いた…菅さんは、ふびんだな、とも思います」とも語った。