櫻坂46の小林由依(21)が9日、当面の間活動休止し休養することを発表した。自身のブログでは「一度、ゆっくりお休みをいただき今後、より全力で活動に励むため少し休憩期間が必要だと思い、決断させていただきました」と経緯を説明し、「決して後ろ向きなお休みでは無く、今後のために今必要な時間なのかなと考えています」と強調した。

小林は15年8月、欅坂46(現櫻坂46)の一期生オーディションに合格した。高いダンススキルと表現力で常に中心メンバーの1人として活躍した。18年末の「NHK紅白歌合戦」では、当時パフォーマンスを伴う活動を休止していた平手友梨奈(20)に代わってセンターを務めた。平手不在時に急きょセンターに立ったケースは紅白以外にもあり、グループを支え続けた功労者だ。

アイドルグループのメンバーが活動休止を発表する際には、さまざまな理由が添えられるが、よく見られるのは「体調不良」だろう。当然内容はケース・バイ・ケースだが、特に人気アイドルであれば、多忙な日々を送る上で体調を崩したり、疲労困憊(こんぱい)となることも十分に考えられる。具体的な病名や症状が伴わない場合もあるし、最近では新型コロナウイルスに感染した例もある。

小林は「体調不良」ではなく「休養」としている。それでも、人気グループの中心メンバーとして活動をする中で、心身共に負担がかかり続けていたことは間違いないだろう。握手会やライブなどの日々の活動に加え、時にはメンバーの卒業や脱退、急なスケジュールの変更、大人数グループならではの心が揺れ動く場面が何度もあったはずだ。

ソロのタレントや俳優、女優であれば、所属事務所の意向によっては、明らかに疲労がたまってきた際にあえて仕事をセーブすることもあるだろう。もちろん売り出し中の若手となれば難しいかもしれないが、ある程度のキャリアを積めば仕事量をコントロールすることも可能だし、一定期間の“リフレッシュ休暇”のようなものをとらせる場合もあるだろう。

だが、アイドルグループ、まして「坂道」シリーズなどの人気グループであれば、なかなかそうはいかないかもしれない。握手会やライブはもちろん、基本的には年複数枚のシングルやアルバムなどの制作があるし、テレビやネットなどの番組出演、ファッション誌や生写真などのスチール撮影、CMやMVなどのムービー撮影、媒体取材、ファンイベント、ブログ、SNSなどなど…。人気メンバーであるほど、膨大な量と種類の仕事で日々のスケジュールは埋まっていく。

中心メンバーとなれば当然不在の際の影響は大きいし、人気グループであるほど大勢のファンが待っている。関わるスタッフも多岐にわたるし、グループのメンバーも含めて、大げさに言ってしまえば大人数の「生活」がかかっている。必然的に“走り続ける”ことが求められ、心身の回復が追いつかないこともあるだろう。

今月4日に乃木坂46を卒業し芸能界から引退した大園桃子さん(21)は、以前体調不良で活動休止していた時期について「みんなは頑張っているのに、自分1人だけ休んでいるという罪悪感がありました」と振り返っていた。人気アイドルグループの人気メンバーゆえの葛藤があった。

今回の小林の「休養」発表は、アイドルの活動環境に新たな一石を投じた可能性もある。もちろん、誰も彼もどんどん休んでいい、というわけにはいかないかもしれないが、過酷なアイドルグループの活動の中で、時には明確に「休養」と打ち出してはっきりと休ませることも必要だろう。

発表を受け、SNSなどでは「ゆっくり休んでください。また櫻坂を支えてほしいです」「必要な時に休養できるのはいいと思う」などとファンらの声もあがっていた。小林のこれまでの活動実績も踏まえ、おおむね前向きに受け止められているようだ。小林もブログで「心配せず、待っていていただけたらうれしいです」「また笑顔で戻ってきます!」とつづっている。

16年4月のデビューシングル「サイレントマジョリティー」のMVは、小林が自転車をこぐシーンから始まる。文字通り走り続けてきた21歳が一度、羽を休める。【横山慧】