先日、歌手山本譲二(72)の新曲「比翼(ひよく)の鳥」の発売記念イベントの取材に行った。「比翼の鳥」とは雄雌の一目一翼が一体となった空想の鳥で、転じて夫婦の仲むつまじさを意味する。難しいタイトルだが、山本の代表曲「花も嵐も」のような夫婦物の秀作である。

この日はちょっと強引だが、新曲にちなんで、都内のゴルフ練習場で“鳥”のようにボールの飛距離を競うイベントを行った。このイベントで、今も続く新型コロナウイルス感染症の猛威をあらためて感じた。

実は対戦相手として、鳥をモデルとした近県のマスコットを招聘(しょうへい)していた。取材依頼書にもその対戦相手名がきっちりと書かれていた。だが、当日、会場のゴルフ練習場に行ってみると、レコード会社関係者が「実は参加できなくなりました」と説明。まん延防止等重点措置が施行され、都道府県間の移動自粛が求められたためだった。

そこで急きょ代理で登場したのが、東京・巣鴨が生んだご当地キャラクターすがもんだった。イベントの趣旨に合った鳥をモデルとしたマスコットで、都内のマスコットなので移動に問題はなかった。

配られた資料には、ご丁寧にすがもんのプロフィルも入っていた。すがもんは鴨の国からやって来た男の子(12)で、身長100センチ。性格はマイペースでのんびりやさん。トレードマークは赤いハッピで、これを着ておじいちゃんおばあちゃんの原宿と言われる巣鴨の商店街などを盛り上げているという。池や川でよく鴨の姿を見かけるが、秘密のトンネルを使って「鴨の国」から人間の世界に遊びに来ているとか。ちなみに嫌いな食べ物は「ネギ」。理由は想像できる。

レコード会社関係者に「参加を自粛したマスコット名はご勘弁を…」とお願いされた。コロナ禍で、書くといろいろあるのだろうな、と想像して了解した。山本譲二には失礼だが、マスコットの参加、不参加の方が面白かった。

そんな裏事情はともあれ、イベントの方は熱戦だった。山本は早鞆高(山口)で甲子園にも出場した元高校球児で、かつてはプロゴルファー並みの飛距離を誇った。「もし負けたら歌手をやめる」と宣言して臨んだドライバーの飛距離対決は、もちろん山本の快勝。もっとも短い手(翼)で頑張ったすがもんに「素質がある」と高評価だった。急きょの代役で、スケジュールを調整して頑張ったすがもん、ご苦労さまでした。【笹森文彦】