ド派手なカーアクションで人気の米映画「ワイルド・スピード」シリーズの記念すべき10作目のロケを巡って、舞台となっているロサンゼルスで抗議デモが起きている。

2001年に公開された「ワイルド・スピード」は、手に汗握るカーチェイスやストリートレースで世界的な人気を誇り、続編やスピンオフも制作され、60億ドルを稼ぐ大ヒットシリーズとなっている。現在、2023年5月公開予定のシリーズ第10弾「ファストX」の撮影がロサンゼルスで行われているが、近隣住民からは映画の影響で違法なカーレースが増加し、治安が悪化していると抗議の声が上がっていた。撮影現場となっている路上前に26日、近隣住民のほか車の暴走事故で家族を亡くした人ら数十人が集まり、犠牲者の写真を掲げて撮影中止を求める抗議活動が行われた。

大リーグのドジャー・スタジアムにほど近いアンジェリーノ・ハイツは、1作目に登場した俳優ヴィン・ディーゼル演じる主人公ドミニクの家族が経営する店などがあり、ファンの間では聖地として知られ、観光地化している。中には劇中シーンを再現しようとする人もおり、映画をまねたストリートレースやドーナツターンなど危険運転が後を絶たず、近隣住民は騒音や暴走行為に悩まされてきたという。深夜に交差点が占拠されることも珍しくなく、道路にはドーナツターンによるタイヤ跡と焦げたゴムの跡がくっきりと残っている。

報道によると、ロサンゼルスではストリートレースをはじめとした危険運転によってこれまでに178人が犠牲になっているといい、昨年末には歩道を歩いていた大学生が路上カーレースの犠牲にもなっている。こうした事態を受け、映画の宣伝によって違法レースが助長されているとして地元住民らが26日から2日間の日程で予定されていた撮影を中止するようロサンゼルス市警察や配給するユニバーサル・ピクチャーに対して求めていたという。

一方で、ユニバーサル・ピクチャーは近隣住民に対して迷惑料や修復費用などを支払っていると伝えられており、「問題は騒音や焼けたゴムの跡だけでなく、負傷したり命を落とした人がいるということだ」と、デモ参加者たちは違法レースを野放し状態にしているロサンゼルス市警察も批判している。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)