第76回カンヌ映画祭で脚本賞を受賞した「怪物」の坂元裕二氏(56)が29日、授賞式から一夜明けて東京・羽田空港に帰国した是枝裕和監督(60)とともに会見を開いた。

席上で、今後について聞かれた坂元氏は「結構、ベテラン…カスカス。絞っても出ない。これから何が書けるのか正直、見えておりません」と笑った。「振り返った時『怪物』が成長させてくれたなと…10年後、バリバリ書いていたらと、そう思うかも知れないけれど、今もカスカスです」と続けた。

本格的な映画の脚本は、21年「花束みたいな恋をした」に続き、2作目だとした。今後の仕事については「当面、映画を書くことは決まっています。ドラマを書くことは決まっていません」と明かした。

◆坂元裕二(さかもと・ゆうじ)1967年(昭42)5月12日、大阪府生まれ。19歳で第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞しデビュー。同系の07年「わたしたちの教科書」で第26回向田邦子賞、11年「それでも、生きてゆく」で芸術選奨新人賞、13年「最高の離婚」で日本民間放送連盟賞最優秀賞。日本テレビ系の10年「Mother」で第19回橋田賞、14年「Woman」で日本民間放送連盟賞最優秀賞。TBS系の17年「カルテット」で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。近年の作品には21年のフジテレビ系「大豆田とわ子と三人の元夫」、22年の日本テレビ系「初恋の悪魔」など。16年から東京藝術大大学院映像研究科映画表現技術脚本領域教授。

◆「怪物」大きな湖のある郊外の町で起きた、よくある子供同士のケンカに見えたものが、息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち主張が食い違い、主次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちはこつぜん姿を消す物語。シングルマザー麦野早織を安藤サクラ(37)沙織の息子・湊を黒川想矢(13)湊の友人の星川依里役を柊木陽太(11)担任教師の保利道敏を永山瑛太(40)が、それぞれ演じた。劇中には、黒川が演じた湊と柊木が演じた依里が、男の子同士でお互いを好きになっていく過程と、その心の動きが繊細かつ克明に描かれている。2人は演じるに当たり、性的シーンで俳優と製作側を取り持ち、ケアするインティマシーコーディネーターや、保健体育の先生の指導も受けている。