作家の伊集院静(いじゅういん・しずか)さん(本名西山忠来=にしやま・ただき)が24日、亡くなった。73歳。関係者を通じて発表した。

葬儀は近親者のみで執り行われる予定。先月27日、肝内胆管がんを患い、当面の間の執筆作業を中止することを発表していた。

伊集院さんは野球少年で幼い頃から白球を追いかけて、山口・防府高校野球部で甲子園を目指していた。その後、立大に入学し硬式野球部に入部。68年の東京6大学野球の新人戦に出場。5回に投手横山の代打で出場し、左打席から安打を放ったことも。ひじの故障のため退部したが、作家になって以降も野球界との関わりが強かった。

特に巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏とはプライベートでの付き合いがあり、会食をともにして励ます機会が多かった。

16年元日の本紙インタビューでは、そんな松井氏のエピソードも明かしていた。失敗することの大切さにいて話が及ぶと、「三振しないと名打者は育たないということと同じ」と、親交ある松井氏の話を始めた。

松井氏はヤンキース時代の09年、ワールドシリーズでフィリーズに勝ってMVPとなったが、大リーグに入った03年に同じアメリカンリーグ東地区の宿敵レッドソックスの好投手ペドロ・マルチネスに10打席無安打と、打てなかった。その時、長嶋茂雄終身名誉監督に「毎日素振りを300本やるなら、50本は打ちたい投手を想定して振りなさい」。松井氏にとって、打ちたい投手こそマルチネスだった。

伊集院さんは「松井は毎日300本の素振りをする生活を6年やって、09年のワールドシリーズでフィリーズに移籍していたマルチネスから2本のホームランを打ってMVPになった。人は松井がマルチネスを想定して、毎日素振りをしていたことに気が付かない。人生の本当の姿はMVPを取った打席にあるのではなく、6年間、2000日、黙々と素振りをしていたところにある」と称したこともあった。