オープニングで度肝を抜かれた。

それまで暗かったステージに照明がともされると、中央にはイルカが立っていた。ただ、その衣装が…赤と青に彩られ、ヒラヒラが付いたミニスカートだった。大胆に太ももを公開する大サービス! AKBか、はたまたキャンディーズか、と思わせる華やかさだった。

12月7日、大阪府の東大阪市文化創造館。口うるさい大阪のファンも、ミニスカートのイルカには「何が起こったんや?」と呆気に取られたのではないか。フォークグループ、シュリークスの一員として1971年(昭46)4月25日発売の「君の生まれた朝」でデビュー。来年、55周年を迎えるため、東大阪公演は「プレ55周年コンサート」として行われた。

「雨の物語」「海岸通」「あの頃の僕は」「サラダの国から来た娘」と、ソロデビューから初期の頃の曲を歌い始めると、ファンは衣装のことなど気にもとめることなく、場内はイルカワールド一色となった。

「父(保坂俊雄さん)がジャズバンドをやっており、美空ひばりさんのバンドの指揮も担当していました」「12月3日の誕生日で、古希(70歳)プラス5歳になりました。後期高齢者です」などと話す軽妙なトークは昔と変わらない。その昔、ラジオの「ヤングタウン」「オールナイトニッポン」で聞いていた声そのままだった。

会場のファンはイルカと同世代もいる一方、ファミリー層も目立った。幅広く、老若男女から支持されていることがわかった。

コンサートは休憩を挟み、後半はイルカも衣装替え。自らデザインした着物風のかわいらしい衣装で歌った。

わずかに年齢を感じさせたのは、アコースティックギターがスタンドで固定されていること。15年ほど前から頸椎狭窄(けいついきょうさく)症に悩まされ、重いものを持つのが負担になった。ライブでは、固定されたギターにイルカが合わせにいく。そのため、イルカが上半身を左右に揺らしながら歌っても、ギターは不動という珍しいスタイルに。「よくできたアイデアだな」と感心した。

ライブ後半、「なごり雪」のイントロが流れ出すと、ファンは静かに聴きいった。この曲が世に出て50年。「作者の伊勢正三さんとも話すんですが『もう、私たちの手の届かない場所まで行ってしまったね』と。子どもが親を追い越していくような、それだけ偉大な存在になりました」と、9月の取材会でイルカは同曲についてしみじみと語った。

「継続は力なり」というが、今回のライブでは「今もこうしてコンサートで歌えることは幸せでしかありません」と心情を明かしていた。

かつてのヒット曲を「懐メロ」と称することもあるが、「なごり雪」はそれにはあてはまらない。何十年ものブランクを超えて耳に飛び込み「あー懐かしい」と感じるのが懐メロとすれば、「なごり雪」はこの50年、ずっと心のどこかに生きていたからだ。作品の持つ情景やメロディー、そしてイルカ独特の歌声は、今も変わらず多くの人から愛されている。

世にヒット曲は数多くあれど「なごり雪」は特別な光を放つ存在。この先、50年たっても、なお人の記憶から消えることはないように思う。【三宅敏】