<日刊スポーツ映画大賞:石原裕次郎賞・あなたへ(降旗康男監督)>◇28日◇ホテルニューオータニ 「あなたへ」が石原裕次郎賞を受賞した。メガホンをとった降旗康男監督(78)が登壇して、裕次郎夫人の石原まき子さんから賞金300万円を贈られた。

 石原裕次郎賞に輝いた「あなたへ」の降旗監督は、映画界のトップスター、石原裕次郎さんと高倉健(81)について語った。

 同賞を前年に受賞した橋本一監督から盾を受け取り、「あなたへ」に出演した三浦貴大(27)から花束を贈られると、かみしめるように切り出した。「石原プロのスタッフルームで、残った酒をみんなで乾杯する日々だったもので。今日この賞をいただいて、その時の乾杯の酒と同じ元気をもらった気がします」。

 70年代に裕次郎さんが主演したドラマ「大都会」の演出を手掛けた。「こういった形でまた裕次郎さんと結びつくというのは、他の人に『良かったね』と言われること以上にうれしいですね」と、ほほ笑んだ。

 さらに、「あなたへ」に主演した高倉との共通点にも触れた。トップスターの共演は実現しなかったが、2人をよく知る降旗監督は「男っぷりというか…。裕次郎さんも健さんも、曲がらない男なんですね。そこが俳優としての魅力だった」と話した。裕次郎夫人の石原まき子さんからは「この作品には、降旗監督さんの人間性と、高倉健さんの優しさが詰まっています。感激しました」と祝福されると、ゆっくりと頭を下げた。

 01年「ホタル」以来3度目の裕次郎賞。「裕次郎さんとは同い年だったので、『まだやってんのか』って言われているようです。だけど、同時に『おう、頑張れよ』って言われている気もします。大変ありがたいです」。

 高倉とは、半世紀にわたってタッグを組み続けている。この日は「お互いにもう先が短いからね」と苦笑いしたが、「早く、ともかく早く(次の作品が)続いていければ。僕らだけじゃなく、映画界の皆さんで努力していきたいですね」と高倉の新作撮影に向けた追い風を期待していた。【横山慧】

 ◆あなたへ

 北陸の刑務所の指導技官、倉島英二(高倉健)は50歳を目前に刑務所に慰問に来た歌手洋子(田中裕子)と結婚。平穏な生活を営んでいたが、15年後に洋子が死去。遺言の絵手紙に「故郷の海に散骨してほしい」と記されていた。なぜ生前、思いを伝えなかったのか。英二は自家製キャンピングカーで総距離1200キロの旅に出て、散骨した時、妻の真意に気付く。降旗康男監督。

 ◆石原裕次郎賞

 戦後を代表するスター石原裕次郎さんの遺志を引き継ぎ、石原プロモーションの全面協力で日刊スポーツ映画大賞に併設。興行的にヒットした作品や、完成度が高い娯楽大作に贈られる。賞金は300万円。また裕次郎さんをほうふつとさせる将来性豊かな、映画デビュー5年以内の新人に贈られるのが石原裕次郎新人賞(賞金は100万円)。過去25回の開催でこれまで選出されたのは12人とハードルが高い。

 ◆降旗康男(ふるはた・やすお)1934年(昭9)8月19日、長野県生まれ。東大卒業後、57年に東映入社。66年「非行少女ヨーコ」で監督デビュー。同年「地獄の掟に明日はない」で高倉健主演作を初監督。以後も「新網走番外地」シリーズや「冬の華」「駅

 STATION」「居酒屋兆治」「夜叉」「あ・うん」「鉄道員(ぽっぽや)」「ホタル」など高倉とのコンビでヒット作を連発。78年に東映退社後はフリー。