有馬記念は「成長力」が鍵を握る。この1年の歩みを振り返り、最も伸びしろが大きかった馬はどれか。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、ジャスティンパレス(牡4、杉山晴)に注目した。天皇賞・春で悲願のG1制覇を飾り、天皇賞・秋は脚質の幅を広げて、新しい一面を見せている。昨年7着のリベンジなるか、検証した。

厩舎で記念撮影する杉山晴調教師とジャスティンパレス
厩舎で記念撮影する杉山晴調教師とジャスティンパレス

出走陣営の有馬記念への意気込みを示す漢字一文字として、ジャスティンパレスの杉山晴師は、感謝の気持ちを伝える「謝」と記した。天皇賞・春でG1制覇、全国リーディングも先週までJRA53勝でトップを走る。

好成績を挙げた厩舎の中でジャスティンパレスは4戦2勝、2着1回、3着1回。大黒柱としてしっかり結果を残してきた。同馬の1年の活躍を漢字1文字で記すなら「射」はどうだろう。音読みは杉山晴師と同じ「しゃ」だが…。まず最初に光が「射」(さ)したのが天皇賞・春だ。2歳のホープフルS2着時から期待され、G1挑戦6回目にしてようやく戴冠。能力の高さを証明した。

宝塚記念では新たな一面も見せた。それまでの先行差しではなく、後方から外をまくってイクイノックスの0秒2差。さらにスタートが決まらず後方からになった天皇賞・秋でも自身最速となる上がり33秒7で2着。矢を「射」(い)るがごとし、強烈な末脚を繰り出して脚質の幅を広げた。

ジャスティンパレスの杉山晴紀調教師
ジャスティンパレスの杉山晴紀調教師

戦法の変化は成長の証しといってもいい。05年のハーツクライがそれまでの追い込むスタイルから、一転した先行策でディープインパクトに土をつけたのは有名だ。先行から差しに転じた場合もしかり。自分の形ではなくても力を出せる。ジャスティンパレスの近2走が、まさにそれだ。今ならどんな展開でも崩れることは考えにくい。

今回は距離が2500メートルに延び、流れにも乗りやすい。前半が遅ければ前、速ければ後ろ。鞍上の意のままに立ち回れる「自在性」を手に入れたのは大きい。昨年7着のリベンジへ、最後は有馬という大きな的を「射」(い)抜く。

【ここが鍵】成長力と勢い

有馬記念で連対した伏兵馬に共通するのが成長力と勢いだ。昨年2着のボルドグフーシュは同年6月に2勝クラスを勝ったばかり。その後に神戸新聞杯3着、菊花賞2着を経て出走にこぎ着けた。

20年2着のサラキアは2走前の府中牝馬Sで初めて重賞を制し、エリザベス女王杯2着から11番人気で穴をあけた。15年の覇者ゴールドアクターは、条件特別から4連勝での戴冠。伸びしろの大きさで古馬頂点まで駆け上がった。

G1での実績はもちろん大事だが、それ以上にこの一戦に向かうステップ、上昇度、勢いなどを加味して優勝馬を探っていく必要がある。

■ジャスティンパレス 体すっきり

今年2度目のG1制覇を狙うジャスティンパレスは18日、厩舎の馬房で全休日を過ごした。「いつもの感じで馬房の中では落ち着いている」と担当の池水助手。確かに、休日を楽しむかのようにくつろいでいた。

今、とにかく状態はいい。「見た目に体はすっきりとして張りもある。先週、乗ってくれた横山武騎手は『前走より動きが良かった』と言っていた。僕もそう思っていたので良かった」と同助手はほほえむ。昨年の有馬記念は7着だったが、1年間で大きく進化。「体質も強化され、去年とは別馬のようになった」。その成果が、天皇賞・春の圧勝や天皇賞・秋2着につながった。イクイノックスが引退した今、現役最強の座を継ぐのは、この馬か。

有馬ウイークが幕を開けた月曜の朝、ジャスティンパレスは自馬房で穏やかに過ごした(撮影・岡本光男)
有馬ウイークが幕を開けた月曜の朝、ジャスティンパレスは自馬房で穏やかに過ごした(撮影・岡本光男)

■プラダリア 先行力に磨き

プラダリアは京都大賞典で青葉賞以来、1年5カ月ぶりの勝利を挙げた。道悪で恵まれた面もあるが、ボッケリーニとのたたき合いで首差しのいだように、詰めの甘さが解消してきた。なかなか馬体重が増えなかったが、前走の6キロ増、初の470キロ台は成長とみていい。以前にも増して先行力に磨きがかかっており、前走からの2カ月半でさらに成長すれば、上位に絡んでくる可能性はある。

プラダリア(2022年10月19日撮影)
プラダリア(2022年10月19日撮影)

■スターズオンアース パワーアップ

ジャパンCのスターズオンアースは、負けて強しの競馬だった。怪物イクイノックス相手に4番手の積極策で勝負を挑んだ。最後は離されたが、2着リバティアイランドに食らい付いた根性は大したもの。以前はオークス、秋華賞など後方から追い込む形が多かったが、ハイペースを先行して粘れたのは、さらにパワーアップした証拠。一頓挫あった前走をたたき、秋2戦目の上積みも見込める。

坂路で調整するスターズオンアース(2023年12月17日撮影)
坂路で調整するスターズオンアース(2023年12月17日撮影)