このコラム「現場発」という名称で紙面掲載されていたので、コロナ禍での取材現場のもどかしさを記してみたい。

DeNAは2月28日、キャンプ最終日での練習試合・巨人戦(沖縄セルラースタジアム那覇)に1-7で敗れた。5回の攻防に起伏があった。昨年は「チーム打率、本塁打1位だが、チーム得点は3位」で「得失点差はプラス42でリーグ2位だが、チーム順位は4位(ちなみにチーム順位2位阪神はプラス34、3位中日は得失点差マイナス60)」。豪快だが緻密さに欠けた。このあたりが5回に浮き彫りになったと感じ、リンク先の原稿(https://www.nikkansports.com/baseball/news/202102280000850.html)を書いた。

先の原稿では攻守両面に触れているが、本当はもっと守備にポイントを絞って書きたかった。守備で2失点となったピックオフプレーについては、捕手からの送球が三塁走者に当たるという「アクシデント」があった。このため、三浦大輔監督が「積極性」「視野の広さ」という理由で、送球した戸柱恭孝捕手を高評価したのは理解できる。タイミングはアウトになってもおかしくなかったし、練習試合やオープン戦は試行錯誤を繰り返して、公式戦での成功へと結び付けるべきだからだ。

より注目したのは、外野手から内野手への返球だ。先の原稿では「5回裏は守備が乱れた。無死一、二塁で2番吉川は左翼線への飛球。二塁走者の松原が三塁へタッチアップした。左翼の桑原将志の三塁返球を中継に入った遊撃柴田竜拓は捕球できず、三塁へとゴロが転がった。この間に、一塁走者の中島が二塁へ進塁。1死二、三塁とピンチが広がった」と書いた。これは事実だ。

実は、これまでの練習試合でも、外野からの内野への中継が乱れるケースが多かった。もっと言えば、キャンプ中の練習から多かった。これまで隙を突いてくるチームがなかったが、他球団のスコアラーから報告が上がれば、いつか落とし穴になる可能性があるかもしれないと、個人的には感じていた。

だが、これはあくまでキャンプを見ていたDeNA番記者として感想であり、背景にある「真実」にたどり着いていないかもしれない。なぜなら試合後、小池正晃外野守備走塁コーチ、永池恭男内野守備走塁コーチ、何より送球した桑原将志、中継に入った柴田竜拓を取材できていないからだ。

これまでなら「ぶら下がり取材」といって、試合後にコーチや選手に話を聞くことができた。試合で感じた疑問を自由にぶつけることができた。だが、今年のキャンプの試合後は、監督や話題となりそうな一部選手の「囲み取材」「代表取材」に限定されている。2月28日は三浦監督、先発した浜口遥大投手、古巣から安打を放った田中俊太内野手が取材に応じてくれた。これはこれで、コロナ禍の状況下では、ありがたいことではある。

もしかしたら、DeNAは、何か新たな中継プレーの技法を試しているのかもしれない。巨人戦では、記者席では感じられなかった風や日差しが、グラウンドレベルでは影響した可能性だってある。開幕前哨戦だけに、わざと隙を見せていたのなら、大した策士ぶりだ。もちろん、単純なミスが繰り返されている可能性もある。

コロナ禍においての取材には、真実にたどり着く難しさがある。もどかしいが、可能な範囲で模索していきたい。【DeNA担当=斎藤直樹】

2月28日の巨人対DeNA 5回裏巨人1死二、三塁、三塁へ悪送球する戸柱(右)。打者陽(2021年2月28日撮影)
2月28日の巨人対DeNA 5回裏巨人1死二、三塁、三塁へ悪送球する戸柱(右)。打者陽(2021年2月28日撮影)