不完全燃焼の春だった。早実(西東京)の清宮幸太郎外野手(2年)が2安打1打点も、都立校の昭和(西東京)に逆転負けした。「4番中堅」で出場し、初回1死一、三塁から二ゴロで先制打点。5回には積極的な走塁で中前二塁打をマークした。今春は練習試合を含む7日間12試合で毎日の14本塁打と量産態勢に入っていたが、接戦で勝利に導く1発は出なかった。チームは2季連続の2回戦敗退。夏の西東京大会はノーシードが決まった。

 球場に散る桜の花びらのように、清宮の春が終わった。同点とされた直後の7回、1死走者なしで外角への初球を引っかけた。二ゴロで流れを変えられず、チームは8回に満塁本塁打を浴びた。「ボール球に手を出す悪いくせが出て、相手を乗せてしまった。今日のようなバッティングは4番の姿ではない。全然ダメでした」。反省の言葉を並べた16歳の目は、少し赤かった。

 豪快な1発はなくても、足で魅せた。5回、遊撃手が三塁寄りに守備位置を移す「清宮シフト」で、空いた中前へ運んだ。「前の打席(右安)も行けそうだったので狙った。相手に走ってこないと思われてますから」。定位置より後方にいた中堅手の動きを確認し、二塁へ向かって加速した。

 184センチ、98キロの体格でも、50メートル走は6秒5と遅くない。昨夏U-18(18歳以下)日本代表で親交を深めた楽天オコエばりの中前二塁打だった。「やった後に『オコエさんっぽいな』と思いました」。高校通算36発のスラッガーが見せた意外な一面に、球場は沸いた。

 この日は徹底して外角を攻められ、量産していたホームランを阻止された。清宮は「トップのバッターになりたいし、警戒されたほうが燃える」と言い切った。厳しいマークをはねのけて本塁打を重ね、夏の聖地を目指す。【鹿野雄太】