ラスト登板を3人斬りで締めた。今季限りで現役引退を表明していた日本ハム木佐貫洋投手(35)が、ロッテ22回戦に2番手で引退登板に臨み、1回無失点。11球、2奪三振で最後の勇姿を披露した。試合後の引退セレモニーでは胴上げで3度舞った。試合前には引退会見も行い、計3球団で通算62勝右腕が、13年の現役生活に幕を閉じた。

 やや感傷に浸った。午後7時23分。木佐貫の登場曲、ヴァン・ヘイレンの「JUMP」が爽快に響いた。「これで聞くのは最後かな、と。たまにCMで聞きますけど…」。巨人で新人王を獲得した03年から一貫して使い続けたメロディーに乗り、現役ラスト登板は5回。宝刀フォークを駆使しながら、2つの空振り三振を含む3者凡退で有終の美を飾った。

 夢も実現した。6月に巨人から加入した矢野との同時出場。02年ドラフト同期入団で同学年。再び同僚となり、発奮材料となっていた青写真が現実となり、節目は終わった。「アイシングも、もうしなくていいでしょと、そのままベンチで観戦していました」。いつも通り、チームを応援しながら試合を見届けた。

 葛藤と闘い続けた1年だった。「オフから今年は最後だと思って取り組んできました」。昨季は1勝。ひそかに退路を断ち、勝負をかけたシーズン。開幕ローテーションに入れず、2軍戦では0勝6敗、防御率7・67。シーズン終盤に差しかかった8月下旬。2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷で大量の汗を流しながら、苦悩を吐露した。少し、この日が来ることは覚悟していた。「この結果で考えることは、いろいろあります。でもユニホームを着ている以上、次の登板でいい投球をしたい」。折れそうな心をひた隠し、チームに貢献することだけを考える日々。運命の1日が到来した。

 野球人生の岐路に直面しても、ポリシーを貫いた。2軍調整中の9月16日。球団から来季の戦力構想から外れていることが伝えられた。「分かりました」。現実を潔く受け入れた。沈む心を奮い立たせ、言葉を続けた。「これからは、僕の登板機会はいらないので若い選手に、ぜひチャンスを与えてください」という旨を、訴えたという。まだ2軍戦の登板の可能性も残されていた時期。今季、一緒に過ごした後輩たちへと、マウンドを譲った。

 最後まで人のためを思い、自らが出来る最善を尽くした。決死の形相での投球スタイルで、尽くす。野球人生で追い込まれた時も、不変だった。

 試合後のセレモニーでも、らしさ全開だった。「温かく大きな声援で、これからもファイターズへの声援を、よろしくお願いします」。惜別のあいさつも、チームへの思いにあふれた。今季最初で最後の1軍登板を終え、今日1日に出場選手登録は抹消。数多くの人に愛された右腕が、野球人生を全うした。【木下大輔】