子どもたちの明るい笑顔が、落ち込んだ気持ちの救いとなる。ボクシングの元WBC世界ライトフライ級王者矢吹正道(31=緑)は5月16日のスパーリング中に左アキレス腱(けん)を断裂した。1月にIBF世界ライトフライ級次期挑戦者決定戦を勝ち、同ランク2位まで上昇。8月に世界前哨戦となるエステバン・ベルムデス(メキシコ)戦が決まっていた矢先のアクシデントだった。

5月26日に手術をへて名古屋市内の病院を退院した。復帰までには4~5カ月かかる見込み。世界再挑戦への道筋が見えていた。何より、コツコツ築き上げてきたランキングを失うことが、年齢的にもつらい。引退も考えたが、思いとどまらせたのは子どもたちの元気な姿だった。

「中日本決勝戦で自分の長女含め、5人が全国大会に出場します! 自分も歩けるようになってきたので9月の決勝戦は後楽園に行きます。よかったら記事にでも」

送られてきた売り込みメールは、どこかほのぼのしていた。

長女の佐藤夢月さんは昨年も未来の世界王者への登竜門、ジュニアチャンピオンズリーグでU-12女子35キロ級を制した。中学に進学した今年も、中日本を制して全国に挑む。

矢吹はけがで動けない間も熱心に子どもたちを指導した。何より、自分へのエネルギーとしてはね返ってきた。昨年は自身の試合が近く、夢月さんのサポートは弟の力石政法に託した。「今回は自分も行くのでサポートして、(出場5人)全員優勝させたいと思います。長女は2連覇かかっているので頑張ってもらいます」と張り切っている。

「子どもたちを見ていると、勝手に励まされる。まだまだ頑張りたい思いが、自然に湧き上がってきます」。少年時代、数々のやんちゃをして、苦難を乗り越えて世界王者となった「元ヤンボクサー」。今は子どもたちに「やる気」と「元気」をもらう。再びベルトを巻く日へ、矢吹はあきらめない。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)