2本足で巨体を支える力士にとって「乾燥」は大敵になる。

肌ではなく、土俵の話。名古屋場所など地方場所の土俵が「滑りやすい」との指摘が力士から挙がり、17年九州場所から本場所で使用する土が統一された。全6場所で「荒木田土」を納入する初野建材工業(埼玉・川越市)特販部の内田英明さん(53)は「福岡は名古屋よりも運ぶのに1日ほどかかるので、水分量を多めにします」と話す。

川越市内で採取する同社の荒木田土はプロ野球のマウンドや春季キャンプなどで重宝されるなど、他競技からも信頼が厚い。角界でも近年は、本場所の環境に近づけたい部屋持ちの親方衆から発注が増えているという。元横綱稀勢の里が興した荒磯部屋も、九州場所宿舎の土俵で使用。需要は強まっている。

2年ぶりの九州場所の土俵。大関正代は「(季節的に)乾燥はしているけど、滑るような感じはそこまでしない」と感触を語る。「一番(大事なこと)は水分量。四つ相撲の方は特にそうですけど、力士の方は土が足につく方がいいと聞いているので、非常に気を使っています」と内田さん。力士の奮闘を支えている。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)