大阪市立大大学院生のIBFフライ級15位坂本真宏(27=六島)が、大みそかにマカオで同級王者モルティ・ムザラネ(36=南アフリカ)に挑戦することが5日、大阪市内の同大学で発表された。「国公立大大学院生ボクサー」の世界戦は日本ボクシング界初。機械物理学系を専攻する“理系男子”が、4階級制覇を狙う井岡一翔、2階級制覇を狙う京口紘人との3大世界戦として夢舞台に立つ。

腹を決め、坂本は世界に打って出る。「最初に世界戦の話を聞いた時、興奮しました。でも、お金、周りの期待、しかも強い王者と海外で…正直、怖さと重圧があった」。10月末に六島ジムの枝川会長から覚悟を問われ、一晩悩んだ。大学院で機械物理学系を専攻。そんな理系の頭でなく、ボクサーの心で決断した。

大阪・泉北高では“帰宅部”だった。非日常感に引かれ、大学でボクシングを始めた。大阪市立大工学部卒業後にプロになったが、大学院2年の昨夏にはロボット工学の一般企業に就職が内定した。ところが、16年11月にWBOアジア太平洋王座決定戦で惜敗した相手、木村翔がその時、世界王座を奪取。「悔しくて」。引退の意思を撤回した。

世界戦は数千万円の経費がかかる。枝川会長は王者側からオファーを受け、同大学の荒川哲男学長(68)に頭を下げ、各企業にいるOBを紹介してもらった。資金集めの殺し文句は「ベルトをとったら、初防衛戦は大阪市立大の体育館で」。その熱意でスポンサー約10社が集まった。

枝川会長は「坂本には知名度も人気も全然ない。現時点でファイトマネーは0円」。坂本は「感謝の気持ちを力に変えて、王者を殴り倒したい」。この日は学ラン、ぐりぐりメガネ姿で会見に出席し、現役大学院生である点をアピールした。できることは何でもやって、一世一代の舞台に立つ。【加藤裕一】