ボクシングの金メダル候補に「笑わない男」の太鼓判!? 東京オリンピック(五輪)出場を目指すボクシングのアジア・オセアニア予選の日本代表が28日、都内で練習を公開。新型コロナウイルスの影響により、来月上旬に中国・武漢で予定されていた予選が、3月にヨルダン・アンマンに変更になったが、フェザー級の堤駿斗(20=東洋大)は「怖いウイルスにかかるリスクを負わなくて良かった。あと1カ月、しっかり作り直せる。強くなる期間ができた」と歓迎した。

この数カ月でも「強く」なってきた自信がある。昨夏から下半身強化、瞬発力アップのために都内のジムに通う回数を増やしたが、12月上旬、「良いスクワットしてるね」と声をかけてきた大男がいた。ラグビーワールドカップ(W杯)日本代表プロップ稲垣啓太(29=パナソニック)。「笑わない男」として流行語にもなった19年の「顔」に褒めてもらった。ボクシング選手と自己紹介すると「応援しているよ」と激励され、「ふくらはぎの筋肉がすごかった。クールで格好良かった」と気持ちが高ぶった。

習志野高では高校6冠。アマチュア界の「怪物」として名をはせたが、東洋大に入学後は減量の失敗など苦しい時期も過ごした。「がむしゃらだった」という高校時代のスタイルから、体格差を技術で補う足を使う「大人の」スタイルに移行時期でもあった。下半身の強化はその新たな武器を手にするための最善策で、「踏み込みの速さがすごいですよね」と敬う稲垣と同系統のメニューで鍛え、復活ののろしをあげた。

昨年末の全日本選手権を制し、アジア・オセアニア予選で6人が東京五輪出場枠をつかむ。日本連盟は枠獲得者を代表に内定するため、3月のアンマンが金メダルに近づく好機になる。

これまで2団体(WBAスーパー、IBF)統一バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)とは5回ほどスパーリング経験を持つ。プロでもうやりたくないと心を折られる選手がいる中、「毎回、毎回、楽しいです。やれるなら週に1回」と力強い。“モンスター”からもその実力を認められる。今月行われたカザフスタンへの遠征でも、練習で世界選手権金メダル通算3個のラサロ・アルバレス(キューバ)と手合わせし、肉体面の成長を感じられたという。

「東京五輪の金メダルは以前は夢でしたが、あと半年でここまでこれている」。夢から現実へ。ラグビー、プロボクシングとトップ選手からのお墨付きを背に、8月、両国国技館で笑顔で頂点に立つ。