09年に亡くなった三沢光晴さんの十三回忌となったこの日、三沢さんの最後の対戦相手だった斎藤彰俊(55)が、思いを胸にリングに上がった。

盟友の命日にふがいない試合はできなかった。モハメド・ヨネと組んでタッグマッチに出場した斎藤。実力者の田中将斗、望月成晃組に敗れはしたが、倒れても起き上がり、絞められてもギブアップはしなかった。中盤には田中を10秒以上、高く持ち上げてからブレーンバスターを決め、さらには2人まとめてリングにたたきつけるなど、随所で見せ場を作った。「勝負に負けたけど、負ける強さも知っていると思うし、もう1回行けよ、と言ってくれていると思う」と振り返った。

最後は田中のスライディング弾丸エルボーに屈したが、天に向かって、人さし指を突き上げた。「しばらく意識もうろうとしていたけど、天井を見上げるとライトがMのマークになっていた」と語った。

12年前の6月13日、三沢さんは斎藤のバックドロップを食らった直後に動かなくなった。仲間のレスラーや救急隊員が心臓マッサージを行ったが、その後帰らぬ人となった。翌日の試合で斎藤はリング上で号泣した。試合後は祭壇に向かい土下座。「引退も考えた。でも社長は弱音を吐くと怒るので。社長の分まで頑張らないと」と立ち上がった。決して弱音を吐かずにリングに上がり続けたプロレスへの魂を、斎藤を初め、多くのレスラーたちが受け継いできた。

天国の三沢さんに、12年経った今でもリングに上がり続ける自分の姿を届けた。「何回負けても倒れても終わらない。必ずみんなに希望を見せる」。三沢さんとの戦いが、誰よりも心に宿る斎藤は、毎年6月13日を迎えるたびに強くなり、何度でもはい上がる。