大相撲の横綱白鵬(30)が所属する宮城野部屋の前宮城野親方で、部屋付きの熊ケ谷親方(45=元十両金親、本名山村和行)が2日、知人男性への傷害容疑で警視庁捜査1課に逮捕された。過去にも八百長の存在を告白したなどと週刊誌に報じられた件で相撲協会から処分を受けている。同協会は「警察の捜査状況を確認し、危機管理委員会にて対応します」とのコメントを発表。同親方への厳罰は避けられない状況だ。

 部屋の移転が決まったばかりの宮城野部屋に、災難が降り掛かった。熊ケ谷親方の容疑は、名古屋場所終盤戦の7月23~27日の5日間にわたり、滞在先の名古屋市内の宿舎で男性(当時30歳)の腰部や臀部(でんぶ)を金属バットで数十回殴打し全治2週間のけがを負わせた傷害罪。業務上の失敗の罰などと供述し「間違いなく私がしてしまったことです」と容疑を認めている。

 師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)は、取材に応じ「残念でなりません。そんなことをする人には思えなかった。申し訳ありません」と謝罪した。警視庁の発表では付け人とされているが「(部屋で)尋ねてみましたが、若い衆ではない。運転手のようです」と、被害者が力士ではないことを明言。熊ケ谷親方は運転手を雇っていたが、短期間で十数人が次々と代わっていた。普段は温厚な性格でも、熱が入ると手がつけられなくなる一面があったという。宮城野親方の監督責任も問われるが「気を引き締めて頑張っていきたい」と話した。

 前宮城野親方でもある熊ケ谷親方は、八百長の存在を知人女性に告白したなどと週刊誌に報じられ、10年に現宮城野親方と年寄名跡を交換し師匠を交代した。その際、協会に「今後問題を起こせば解雇処分を受け入れる」などと自筆で記した始末書を提出している。

 協会は過去の反省を踏まえて「暴力撲滅」を掲げており、言い逃れはできない。宮城野親方は今日3日に協会から呼び出され、事情聴取を受ける予定。危機管理委員会で審議されるが厳罰が予想され、最悪の場合解雇の可能性もある。

 ◆熊ケ谷親方の過去の騒動 04年8月に現役引退後、年寄「宮城野」を襲名し宮城野部屋を継承。だが07年に、愛人とされる女性との会話をテープで録音され、八百長を仲介したなどの発言が当時、週刊誌に取り上げられ、10年に日本相撲協会が降格処分。さらに師匠を外れるように勧告され、元前頭竹葉山の現宮城野親方に部屋の師匠を譲り「熊ケ谷親方」として部屋付き親方になった。

 ◆過去の角界暴行 07年6月、時津風部屋の当時17歳の力士が稽古中に心肺停止状態となり、搬送先の病院で死亡が確認された。当時の時津風親方(元小結双津竜)や兄弟子らの暴行が原因で翌年、同親方と3人の兄弟子が逮捕された。同じ6月には、元力士の男性を殴ってけがをさせたとして、ある部屋の部屋付き親方が傷害容疑で書類送検された。元力士が兄弟子からの暴行で失明状態になったとして、兄弟子と師匠に損害賠償を求めた訴訟も係争中。最近は元力士が現役中に暴行を受けたとして、裁判に訴えるケースが見受けられる。