誠実な相撲道を貫いた若の里は弟弟子の大関稀勢の里にとっても大きな存在だった。

 10代のころに付け人を務め「1年半ぐらい付かせてもらった。どれだけスタミナがあるんだというぐらい稽古をしていた。そして、1回も怒られたことはなかった。勝っても負けても熱くならなかった」と心技体の充実を学んだ。

 負傷を抱える両膝は歩くのもつらい状況だが、決して弱みは見せなかった。大関も「あの人の前では痛い姿は見せられない」と語る。

 先代師匠の故鳴戸親方(元横綱隆の里)の教えを体現した兄弟子が土俵を去り「寂しくなる」と話す。正々堂々と闘う生きざまを目に焼き付け「最後まで信念を曲げなかった。心を打たれた。僕も伝えていかないといけない」と、さらなる精進を約束した。