ただ1人勝ちっ放しだった新横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)に、まさかの悪夢が襲いかかった。初めての横綱対決で日馬富士に寄り倒されて、初日からの連勝が12で、初場所10日目からの連勝が18で止まった。その際に左肩から胸付近を負傷し、救急車で大阪市内の病院へ直行した。新横綱優勝の可能性が一転、出場すら危ぶまれる事態に陥った。師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)は14日目の出場について「明日、相談して決めたい」と話すにとどめた。

 痛がるそぶりをめったに見せない男が、何度もうめき声を上げた。そのことが異常事態を物語っていた。

 稀勢の里は左腕を動かせなかった。右手は左胸にあてる。痛みをこらえ、歩いて中に入った支度部屋で気を抜いた瞬間に「ウゥーッ!!」「アァッ!!」と表情をゆがめた。「フー、フー」と呼吸も荒い。親方衆も駆けつけるほど緊迫した空気。全勝街道を走っていた新横綱が、悪夢に襲われた。

 同格の地位に立って初めて迎えた日馬富士との横綱戦。左足から踏み込み、おっつけた左手が、空を切った。八角理事長(元横綱北勝海)も藤島審判長(元大関武双山)も、負傷したのは「立ち合いで左がすっぽ抜けたときではないか」(同審判長)と推察した。