不良少年グループの中にいるアネキ的な女性-魅力あるヒロイン像の1つだと思う。たいていの場合、強さと意外なもろさを併せ持っていて、そこに心をくすぐられる。世代的には「アウトサイダー」(83年)のダイアン・レインあたりがその典型である。

実は3年前、「インディペンデンス・デイ リサージェンス」の公開に合わせて来日したマイカ・モンロー(26)をインタビューしたときにそれに似たにおいを感じた。

まずは輪郭を含め顔の造作がレインに近い。カイト・ボーディングのプロ選手でもあるので体は引き締まり、自然にウインクができる人だった。日本的に言えば「小股の切れ上がった」印象だ。

そのモンローが持ち味のアネキ的魅力を放っているのが「ホット・サマー・ナイツ」(16日公開)だ。

湾岸戦争が始まり、フレディー・マーキュリーがエイズ死した91年の夏。高校を卒業したばかりのダニエル(ティモシー・シャラメ)が米国北東部のケープコッドにやってくる。父親を亡くしたばかりの彼の気分転換にと、母親が叔母の家に送り込んだのだ。

夏のケープコッドは避暑に訪れた富裕層とつましく暮らす地元民の2層に分かれている。どちらにも属さないダニエルには居場所が無い。そんな彼の目をとらえたのが富裕層に大麻をさばくハンター(アレックス・ロー)だった。ワル特有の魅力にひかれたダニエルはひょんなことから彼のビジネスを手伝うようになる。

一方で、遠い存在と眺めていた町一番の美人マッケイラ(モンロー)とは偶然が幸いして付き合うことになる。

「悪事」のスリルと憧れの美女とのセックス。思春期の青年が妄想する夢物語をダニエルはいっぺんに実現してしまったのだ。が、いいことばかりは続かない。マッケイラは実はハンターの妹で、彼から「大切な妹に手を出すな」と厳命されてしまうのだ。さらにはダニエルの機転で拡大したビジネスは「プロの組織」との摩擦を生み、ホットな夏は危険な領域に突入して行く…。

モンローの魅力は最初に書いた通りで、突き放すような目と時折見せる笑顔のツンデレ感にぞくぞくさせられる。

子役から活躍しているシャラメは、頼りなさそうに見えながら実は思いっきりのいい青年像を巧演している。そしてローの硬派のイケメンぶりが魅力あるアニキ像にピタリとはまる。

これが長編デビュー作となったイライジャ・バイナム監督は「大学在学中にダニエルとハンターにそっくりなコンビがいました。大麻を売り、やがて大学を去っていった彼らを僕は傍観者として見ていました」とモデルの存在を明かす。大学卒業から間もなく練り始めたという脚本には、監督の青春時代のさまざまな思いが込められている。

海、遊園地、ホームパーティー…90年代の米地方都市の光景は、若かりし頃の監督の記憶を映してみずみずしい。遠く極東の地に育った身にも、不思議と懐かしい気持ちになる作品だった。【相原斎】