今、一番サービス精神旺盛なアナウンサーだろう。テレビ朝日の三谷紬アナ(27)。同局の公式YouTubeチャンネル「動画、はじめてみました」(動はじ)ではダイエット企画に奮闘し、飾らない素顔でファンを増やしている。今春から、17日スタートの新番組「まだアプデしてないの?」(土曜午後3時30分)の進行も担当。バラエティーでさらに羽ばたく日も近そうだ。

★新しい価値観紹介

アップデート、略してアプデ。もともとはソフトウエアの更新を指すIT用語だが、最近は人の外見や内面を向上させる意味合いでも使われる。番組では時代とともに変わりつつある新しい価値観を紹介。初回テーマは「親子関係」だ。

「お父さんと娘とか、お母さんと息子とか、今までギクシャクしがちな親子関係が今はアップデートされて、友達や恋人みたいになっているのが今の新しい価値観。(共演の関西ジャニーズJr)なにわ男子の皆さんに根掘り葉掘り聞くと、私でもびっくりするような価値観を持っているので、そういうところをみんなで学んでいこうという番組です」

母親と仲のいい息子が「マザコン」とネガティブに表現される風潮もある。

「今はそうじゃなくて、そういう人もいる。みんなが認められる価値観でありたいよねっていうのを提言していく番組でもあるので、一線を引かれていたような人たちが生活しやすくなるといいなと」

新しい考え方を押しつけるのではなく、取り入れるかどうかも「見ている人次第でいい」と話す。

「昔の価値観が悪いというのではないし、みんながその価値観を持たなきゃいけないというわけでもない。今、自分が間違えているんじゃないかと思っている人にはそれが正解だということも分かってほしい。自分がマイノリティーだと思っている人を救えたらいいなという思いもあります」

今春入社5年目を迎えた。「アプデ」は三谷アナの初担当番組のメンバーが制作しており、当時を知るスタッフから進行役の声掛けがあったという。

「『三谷成長したな。アプデしたから、この番組においで』って呼んでくれて。個人的にはアプデできた自負はないんですけど、すごくうれしいですね。成長を見届けてくれているんだなって」

★再生回数178万回超

昨年3月に始まった「動はじ」のダイエット企画でも注目を集める。チャンネル内の人気コンテンツで、「♯1」の再生回数は178万超。タレント出演のものを含む1000以上の動画の中で、再生回数トップ10を維持している。企画は三谷アナ自身の発案で、ちゃめっ気たっぷりに語る。

「『会社のお金を使っていいからやりたいことは何?』って聞かれて、ダイエットをやりたい!と。ダイエットって意外とお金がかかるじゃないですか。パーソナルトレーニングに通うとか、サプリメントを飲むとか。プライベートでやると頑張れなかったんです、今まで(笑い)」

YouTubeという“監視の目”を得て順調に体重を落としたが、丸1年たった今「現在めちゃくちゃリバウンドをしていまして」と小声で明かす。

「自分で言うのもなんなんですけど、一時すごく痩せまして。あまりにも痩せすぎてしまって、アナウンス部や制作の先輩、あと芸人さんにも『お前の良さが失われているぞ』と。さすがにキャラクターを失ってまで痩せてしまうのはどうなのかと」

定期的な体重測定をやめるのと同時に、食欲の秋が重なってしまった。

「冬眠するクマかっていうくらいいっぱいご飯を食べてしまい、気付いたら結構なリバウンド。3カ月で5キロくらいボーンと戻りました。逆に自分に太るポテンシャルがあるんだなってすごく感じました。さすがに冬も終わったし、冬眠期間が終わったと思っているので、最近スイッチ入れて頑張ってるんですけど」

動画では汗だくのトレーニング風景を公開するほか、ネット上での妊娠疑惑がダイエット熱に火を付けたことも告白。写真週刊誌に鶏肉を買って帰宅する姿を撮られた際には「ちゃんと(ダイエット)やってんだぞ」とカメラ目線で力説した。常に自然体で、明るくオープンな性格が際立つ。

「アナウンサーは放送が円滑に進むためにいるものだと思っているので、入社してからずっと自分のキャラクターを伝えられていない部分が多かったんです。でもYouTubeは(出演者が)私1人なので、自分を作ってしまうとそれを演じ続けなきゃいけなくなるところが結構厳しいなと思いました」

大学時代、アナウンサー職で内定をもらうと友人から心配されたという。

「『一番向いてない職業だけど大丈夫?』って。『清潔感とかないじゃん!』って言われて。本当におっしゃる通り、アナウンサーの清廉性とか清潔感っていうよりは、泥くさく何でも頑張る! みたいな感じでやってきているので(笑い)。でも自分がアナウンサーになってみると、結構そういう人が多かったんです。サバサバしていて」

どこか遠い存在に見えるアナウンサーに、親近感を持たせたいという。

「みんな割引のお肉買うし、安い居酒屋を見つけるとみんなでそこに行ってみたり。生活も考えていることも同じなんですよっていうことを見せたいから、そのまんまで出ているのかも知れないです。結局私は公私混同みたいな感じになっちゃってるんですけど、それはそれで仕事がしやすくてラッキーって(笑い)」

★話しかけても大丈夫

新人研修では先輩からきつく指導を受けたという。

「がさつだと、かなりおしかりを受けました。『もっとしなやかに丁寧に物事を受け止めて、いつまでも剛速球じゃダメなんだよ。いつでも動けるように、ゆるいボールとか変化球とか球種を増やしなさい』と言われました」

これまで仕事にNGは? と聞くと、「ないです!」と即答。現在も「結局ストレートの剛速球しか持ってない」と苦笑する。アナウンサーとして目指す方向は。

「やれることは何でもやりたいです。何かにこだわるというよりは、求められたらそこに行く。そこで花が咲けばいいなと思っているので、今はとにかくがむしゃら」

街でおずおずと声をかけられるのではなく、「『三谷じゃん!』って言ってもらいたい」とも。視聴者に身近な存在でいたいという。つい最近、理想を体現するようなハプニング? があった。

「この間、電車とホームの間に落ちて挟まっちゃったんです。知らないおじさんがカブを抜くみたいに私を引き抜いてくれたんですけど、その後に『三谷アナウンサーですよね? いつも頑張ってますね』って言ってくださって。人生で一番恥ずかしかったです(笑い)。こんなに恥ずかしい時に声を掛けてもらえるってことは、きっと今私に話しかけても大丈夫っていうキャラクターとして認知してくれているんだなって思って。うれしかったです」

着々と、愛されるアナウンサーに成長している。【遠藤尚子】

▼「まだアプデしてないの?」の演出を手掛けるテレビ朝日芦田太郎氏

とにかく物おじしません。収録では初対面のニューヨークさんに全くビビることなく、イジリ、イジられで笑いを取っていました。間や話題を切り替えるタイミング、VTRのリアクションが良くなりましたし、言葉も自分本位過ぎず、視聴者目線のものが多く放送で使いやすくなりました。進行、リアクション、コメント、全てにおいて能力を高め続けて「テレビ朝日のバラエティーアナといえば三谷」と言われる存在になってください。なれると思います。

◆三谷紬(みたに・つむぎ)

1994(平6)千葉県生まれ。法大卒業後の17年、テレビ朝日入社。これまで「報道ステーション」の気象コーナー、「やべっちF.C.」の進行などを担当。現在の担当番組は「新日ちゃん。」、ABEMA「アベマ倍速ニュース」、「ABEMA的ニュースショー」など。趣味はスポーツ観戦。162センチ。

◆「まだアプデしてないの?」

出演は関西ジャニーズJrのなにわ男子、お笑いコンビのニューヨーク。時代とともに変化する「価値観」にまつわるエピソードを視聴者から募集し、再現VTR化して紹介。新時代に添った事業で成功した人々も取り上げる。

(2021年4月11日本紙掲載)