【先週の言葉】「合わせて200歳ですよ。イヤんなっちゃう(笑い)」

TBSドラマ「渡る世間は鬼ばかり3時間スペシャル2019」(16日午後8時)の放送を前に、石井ふく子プロデューサー(93)とPR会見を行った脚本家橋田寿賀子さん(94)の言葉です。2人合わせて187歳のレジェンドは、取材陣を笑わせながら、あの場にいた誰よりも元気で驚かされます。

取材会では、30年目を迎えた「渡鬼」を通し、高齢者層に自立のススメを展開しました。511話目となる今回は、「幸楽」の担い手が娘夫婦に移り、やることがなくなった五月(泉ピン子)が、新たな生きがいを探してユーチューバーに。得意料理を動画配信して評判になる展開です。94歳でスマホを勉強して脚本を書いた橋田さんは「自分をアピールして共感者を1人でも作るにはスマホは便利で、すごい媒体。1人で生きても、お金なくても、歩かなくても友達できるよ、ということ」。何かの役目を終えた人の、次なる自立を鼓舞しています。

「渡鬼」のテーマについても、「歳をとるにしたがって、皆さん自立をなさい、というテーマで追い掛けてきた」ときっぱり。嫁姑問題も、「幸楽」「おかくら」の世代交代も、確かに自立の物語ですよね。

「家族がどんどん壊れていく。それはいいことだと思うんですよ」という刺激的な発言も印象的でした。「親の面倒をみて人生が壊れていく中年の方もいる。相手の幸せを考えることは大事だけど、自分を犠牲にしてまでやることないでしょうと。親も1人になって、自立して自分の幸せを考えて。自分を大事にすれば、世の中良くなりますよ」。ホームドラマ一筋の脚本家の境地に聞き応えがありました。

橋田さん自身、89年に夫を亡くして以来1人暮らし。「歳をとるにしたがって自立」を実践している1人です。「だんだん友達付き合いが面倒臭くなってくるというのが私の平成の変化。もっともっと1人でいたいと思う」と明快です。「昔と違って、スマホ、テレビ、音楽など1人でも楽しいことがいっぱいあって、さみしいことありません。そういう人は多いんじゃないでしょうか」。

自身のユーチューバーデビューについては「何度教わっても分からない」と笑って否定しましたが「本当はスマホをちゃんと操りたい。今のドラマをまねしたいけどできないのが悩み。フェイクニュースとか、題材として面白いですよね」と、創作意欲が尽きません。スマホに触れたことで、ネット上に「橋田寿賀子」の人物情報が「やたらとある」ことも発見。「私が覚えていないドラマも書いてある。私に聞くべきですよね。本当にひどい」と笑わせ、「だから面白いんですよね。私も、ほかの人のを見たら面白かった」と、縦横無尽のトークを繰り広げました。

次回作の構想を聞かれると「来年死んでるかもしれません」と和ませ、「今年は2度入院しましたから。この前、ベトナムの病院に4日間入院して死にそうになって、来年の約束はしないと決めました」と元気にマシンガントーク。脚本界の第一線で自立し続ける94歳大先輩のパワーと人間力に圧倒されるばかりです。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)