フジテレビが、1996年(平8)から22年、続いた「めちゃ2イケてるッ!」の後番組として、5日から「世界! 極タウンに住んでみる」(土曜午後7時57分、初回は午後7時から2時間特番。以後「極タウン」)をスタートする。ディレクターが旅の達人も驚く極端な街を口コミで見つけ、実際に住む様子を視聴者が体感できるような視点で見せる「めちゃイケ」とは全く毛色が違う“海外移住体験&体感バラエティー”だ。初回を一足先にチェックした記者が本音を交えて紹介する。【村上幸将】

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 MCの東野幸治(50)が「住めば都? 過酷…極タウン、スタートです!」とコールし、オープニングが流れた直後、いきなり東京・秋葉原で外国人へ聞き込みを行うシーンが始まる。唐突感は否めないが、ここに番組の肝がある。

 「極タウン」は、1月に1度、特番として放送された。番組ディレクターが“移住人”となって「24時間太陽が昇らない」、「1000人が地下で暮らす」など極端な町「極タウン」を実際に移住して紹介した。

 レギュラー化される今回の1つ目のポイントが、ディレクターが外国人に聞き込みし、得た情報を元に「極タウン」が本当にあるかどうかも分からないまま海外に飛ぶことだ。木村綾乃ディレクター(37)は「本当に町があるのか? というところからスタートしていますので何もなければ撮れ高はゼロです。リアルです!」と力を込めた。

 テレビ朝日系「陸海空こんな時間に地球征服するなんて」で、顔がナス色に変色したことで“ナスD”と呼ばれる友寄隆英ディレクターをはじめ、裏方であるはずの制作陣が、タレント以上に体を張った“芸風”などで目立ち、話題となっているのが昨今の風潮だ。

 ただ「極タウン」で“移住人”になるディレクターは、キャラも濃くない完全な裏方だ。木村ディレクターは報道番組や教育、旅番組を制作してきた。もう1人の“移住人”青木祐太ディレクター(27)は、バラエティー畑でタレントと一緒にロケした経験こそあるが、ディレクター1年目で海外ロケ自体も初めて。ともに自らが主役となって出演した経験は、ほぼない。そんな2人が数百人に聞き込みを行い、木村ディレクターは村人全員がカンフーの達人という中国の村、青木ディレクターはペルーの砂漠のオアシスに町があると聞き、現地に飛ぶ。

 2つ目のポイントが、両ディレクターが頭に着けて撮影する「目線カメラ」だ。ディレクターが移動する際に走ったり、逃げ惑ったりすれば画面は微妙に揺れるなど、ディレクターが見たままに近い海外の様子が映し出される。見やすさ、画質の良さを追求する昨今の番組ではあまり見られない映像で、決して見やすいとは言えない一方、生感は伝わってくる。見ているうちに懐かしく、新鮮な感じがした。脳裏に浮かんだのは、ハンディカメラでヒッチハイクする猿岩石を撮り続け、1996年(平8)に日本テレビ系で放送された「進め!電波少年」。関係者も「今、あのようなアナログな目線カメラは使わないです」と説明した。

 3つ目のポイントは、ディレクターが「極タウン」に実際に移住し、生活することだ。ホテルなどへの宿泊はNGで、泊めてくれる人や家を探し、家賃の交渉をして部屋を間借りする。現地民とともに生活するからこそ見える、日本にはない現地の生活習慣を見られるのは興味深い。木村ディレクターは「ホテルには泊まらず、必ず現地の住居に住むということ。現地に行って水道がない、ガスがないなども分かる。仕込みはもちろん一切ありません」と強調する。青木ディレクターは「僕はホームステイの経験もないですし、人の家に長く住んだことがないので、しかも場所は「極タウン」ですしね、大変でしたけど、楽しかったです。家族の普通の食卓を囲めたのも、旅では味わえないことですしね」と語った。

 トラブルも発生する。木村ディレクターは、泣く泣くカットした、とんでもないエピソードを明かした。

 木村D トイレは水洗だったのですが、ある日、おなかが痛くなって駆け込むと流れないんです。聞いたら、節水するために水道の栓を一時閉めていただけだったのですが村の人と共有だし、どうしよう! と。とっさに紙に包んでポーンと川に投げ捨てました。

 そうした“移住人”の奮闘を、東野とパネラーの恵俊彰(53)、そして初回ゲストの土屋アンナと山本美月がスタジオでちゃちゃを入れながら見守る。若い男女が1つ屋根の下で生活する姿をカメラで追う「テラスハウス」に近い空気感も何となく感じた。

 難を言えば、ディレクターが「極タウン」を探しに行くまでの、聞き込みのシーンが長い。番組の肝とはいえ、「極タウン」に至るまであれだけ時間がかかってしまえば、面白いところに至るまでに視聴者は“脱落”してしまうのではないか? 2時間特番で通常より尺が長いというのもあるだろうが“空回り感”は少なからず、感じた。

 一方、MCの東野は“泰然自若”だ。「『めちゃイケ』の後枠でプレッシャーは?」と聞かれると「全然ないです」と即答した。16年末に終了した「SMAP×SMAP」の後番組として、フットボールアワー後藤輝基らをMCに17年1月にスタートも、年内で打ち切られた「ちょっとザワつくイメージ調査 もしかしてズレてる?」を引き合いに「後藤が『誰かがやらなきゃいけない』みたいなこと言ったのが記事になったじゃないですか。こいつかっこええな、おとこ気あるなって思ったんですよ。それで話をいただいた時に「やりますー」言うて。後輩の後藤におとこ気を教わりました」とMCを引き受けた経緯を語った。

 「めちゃイケ」よりも長くしたい? と聞かれても「僕は意外と視聴率を気にしたりしないんですよ。そんなこと気にしていたら、この仕事受けませんよ」とサラリと受け流した。そして「後藤君のおとこ気もらいましたけど…後藤君の番組はすぐに終わりましたけど、ま、そういう世界ですしね。お話いただいて、ご縁があってやらせていただいていますし。僕らはご縁がなければ、お金も給料もなくなりますし、そういうもんですよ。チームワーク良く、いい番組にしていければと」と自然体で臨む構えを示した。そんな東野の姿勢が番組をどう変化させるか…そこに期待したい。