パラアスリート歴代最長身2メートル46センチのイラン代表モルテザ・メフルザドセラクジャニ(33)がドイツとの初戦に先発出場し、3-0のストレート勝ちを導いた。

最高到達点はアタック196センチ、ブロック194センチと驚異的。両チーム最多18得点を挙げて、16年リオデジャネイロ五輪金メダル獲得に続く連覇へ好発進した。

試合後は「大会の最後の試合まで話すことは出来ない」とインタビューエリアを車いすで通過。だが、「足のサイズは?」の質問には「54・5」と笑顔で答えた。日本の54センチかと思ったが、おそらくヨーロッパサイズ。日本サイズでは33・5センチと明らかになった。プロレスラーのジャイアント馬場さん(故人)は身長2メートル9センチ、足のサイズは34センチだった。

第1セット、メフルザドセラクジャニがレフトからクロスを決めて試合が始まった。床に座ってプレーする競技だが、顔の半分以上が1メートル15センチのネットを超えている。リーチも長く、この試合初めて相手スパイクを止めると、会場のアナウンスが「モンスターブロック出ました~」と絶叫。競り合いとなった終盤、一時は22-23とリードされたが、最後は強烈なライトからのクロスで同セットを逆転で奪った。

第2セット以降は温存される時間も長かったが、要所では怪物ぶりを発揮した。ネット際のボールを両手で相手コートにたたきつける場面も。第3セットでは、シッティングバレー特有ルールでもある相手サーブをブロックで止め、高い壁となり続けた。

身長2メートル10センチでスパイク最高到達点174センチのドイツ代表アルベルト・ドミニク(34)もお手上げだった。「彼は背が高いだけでなく、テクニックがある。体つきがアスリートであってプロフェッショナル。カザフスタンには2メートル25センチの選手もいるし、昔はブラジルにも大きい選手がいて対戦経験があるが、彼はさらにすごい。ブロックも私の30センチくらい上」と絶賛した。

メフルザドセラクジャニは16歳の時に自転車事故にあって骨盤がゆがみ、右足の成長が遅れた。今でも左足が約15センチ長い。さらに下垂体腺腫によりホルモン分泌が過剰となり末端肥大症を発症。つえや車いすでの生活となった。一時は精神的にも追い込まれ、自宅に引きこもり気味だったが、22歳の時に当時のイラン代表監督に誘われ、競技を開始。イランは男女あわせて200以上のクラブチームがあり、競技人口も5000人を超え、プロリーグもあるシッティングバレー大国。東京パラリンピック取材中のイラン人記者も「彼は国内でも有名で、とても人気。ニックネーム? それはない」と英雄であることを明かした。

24日の開会式でも存在感が際立っていたイランの大エース。学校連携観戦プログラムで会場に訪れていた小学生らも「お~すごい。でかい」と声を上げ、大きな拍手を送っていた。【鎌田直秀】